やっぱすっきゃねん!U…A-11
並んで帰る2人。佳代は時折、足を引きずっている。直也はそれが気になるのか、
「オマエ、その足……」
佳代は目尻を下げて苦笑しながら、
「さすがに2日であれだけ練習やると、あちこち痛くなって……」
「まあ、そうだろうな」
「そうだろうなって…アンタは何ともないの?」
佳代の問いかけに直也は、はにかんだ笑いを浮かべると、
「…実は夏休みの間、兄貴と2人で夜走ってたんだ」
「うそォ…」
佳代は、まじまじと直也の顔を見つめる。ムラッ気のある彼の性格から、とても信じられないからだ。
すると、佳代が考えている事を察した直也は照れた表情で、
「兄貴が怪我してる時、青修館高校に練習を見に行ったらしいんだ。すると、あまりの練習量の多さに驚いたらしくてな。その日以来、オレも真似してんだ」
そして、遠くを見つめながら、
「来年、必ず県大会に行かないと……」
「そっか…」
佳代は俯いた。思いは同じなのだ。
黄昏時、空が黄金色に染まる中で2人は学校を後にした。
ー翌日ー
早朝。グランド前に部員達が、いつものように整列している。が、様子が違った。いつもより人数が少ない。
そこに永井が現れた。
「なんだ。やけに今朝は少ないな……」
怪我や体調不良で、1〜2人の休みならいつもの事だが、10人近い休みとなると初めての事だった。
「何人休みなんだ?」
永井の問いかけに信也が答える。
「2年生が2人、1年生が7人です」
永井は小さくため息を吐くと、
「まあ、仕方ない。じゃあ始めてくれ」
朝の練習が始まった。
永井は、部員達のランニング姿を眺めながら、休んだ部員達の事を考えていた。
急にハードな練習に切り替えたために休んだだけで、すぐに戻って来るモノと楽観視していた。それは走っている部員達も同じだった。
しかし、永井らの思惑は外れた。
彼らは2度と野球部に戻って来なかったからだ……