投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

男女8人恋愛物語
【学園物 恋愛小説】

男女8人恋愛物語の最初へ 男女8人恋愛物語 3 男女8人恋愛物語 5 男女8人恋愛物語の最後へ

男女8人恋愛物語 2nd incident-2

「私は大丈夫。風邪も尻尾巻いて逃げる位免疫強いから(笑)雪仁こそ厚着しなさいよ?」
「言われずとも。…さて、用件は済んだか?それなら切るぞ。俺は小説の続きを読みたい」
「また歴史小説?」
「うむ」
「…好きだねぇ、小説も…その話し方も」
「放っとけ」
「…さて、では要望通り電話切りますよ。…明日の10時だからね?」
「しつこい。…場所は正門前だろ」
「よろしい。じゃまた明日ね。お休みなさい」
「あぁ。お休み」
――プッ
「ウフフッ、楽しみだなぁ」
那智はそう呟いて、明日着ていく服選びに再び専念し始めた。
        ・



「…昨日あれだけ確認したのになぁ…」
那智はそう呟いて携帯電話の発信記録を見る。
そこには確かに雪仁と通話した記録が残っていた。
「…どうして何にも連絡くれないの…?私、いっぱい連絡したのに…。………帰っちゃおうかなぁ、もう…」
那智の心の中で、帰りたい気持ちと雪仁に会いたい気持ちとが混ざり合う。
その目にじんわりと涙が浮かんできた時、手中の携帯電話は物凄い音量で鳴り出した。
画面には“八女 雪仁”の文字。
慌てて通話ボタンを押して電話に出る。 「もっ、もしもし!」
慌てて出た為か声が上擦る。
「もしもし、那智?」
ずっと待ち詫びていた雪仁の声が耳を通して体全体に伝わる。
「…ッバカ…ずっと、ずっと待ってたのよぉっ…!?」
堪えていた涙が想いと共に一気に溢れ出す。
「悪い。寝過ごした」
「…どして連絡くれなかったのよぉ…」
「携帯カバンの中だった。今走ってそっち行ってる」
雪仁の目に後ろ姿の那智が映った。
速度を上げて距離を縮める。
「…ずっと…寒くて、バカらしくて、でも雪仁に会いたくて…。……こんな思いするなら帰っちゃえば良かった…」
那智の小さな呟きを聞くと、雪仁はパタンと携帯電話を閉じた。
那智の背中はすぐ近くだ。
「ちょっと…聞いて…キャッ」
全速力で走ってきた速度のまま、那智を後ろからかっさらう。
「び……びっくり…した……」
驚きを隠せない表情の那智をそのままギュッと抱き締める。
「い…痛いんですが…」
「悪い。今、力の加減出来そうに無い。…てか、お前冷え過ぎ。暖かい格好しろっつったろ」
そう言って雪仁は那智の頭にズボッとニット帽を被せた。いつも彼女が好んで着用している雪の結晶の模様の帽子である。
「あ…帽子…。忘れてた…」
「全く、世話の焼ける女だな。浮かれ過ぎなんだよ」
「…何で忘れた事知ってたの?」
「機密事項。男には黙って格好付けたい気分の時があるんだよ」
「え〜、何それ(笑)」
「…それよか機嫌治ったのか?」
「う〜ん…まぁ、良しとするか。帽子持って来てくれたしね」
「さいですか。…オイ、お目当てのモノ降ってきたぜ」
雪仁はそう言って空を指差す。
「…うわぁ……雪だぁ…」
那智はいつの間にか雪仁の腕に自分の腕を遠慮がちに絡めている。
「見りゃ分かる。…ホラ、寒いから行くぞ」
自分の腕に那智の腕をしっかり絡めて雪仁は言う。
その彼の耳は寒さ以外で赤くなっていた。
絡めた腕に寄り添って那智は小さく呟いた。
「…待ってて良かった」


男女8人恋愛物語の最初へ 男女8人恋愛物語 3 男女8人恋愛物語 5 男女8人恋愛物語の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前