秋と春か夏か冬04話〜『夏ストーリーは突然に』〜-6
「夏輝さん。もう少し詳しく教えてくれますか」
鈴が仕切り直す。
「えー!!!ホントに僕のことを覚えてないの〜??」
俺の正面に立ち、真っ直ぐ見つめてくる夏輝。
「…うん。まったく」
言った瞬間…突然、夏輝が泣き出した。
ちょっと待て!俺は女の子の涙が苦手なんだ!
「そっか…そうだよね……恭介くんにとってはたった一晩の出来事だもんね‥‥」
さらに焦る俺…てか、また誤解を生むだろーが!
でも…俺がなんかしたことは本当っぽい…。
「ごめん。とりあえず泣きやんでくれないか」
「……ぐす‥じゃあしばらく恭介の…にいて……良い?」
…なんか少し聞き取れなかったけど…。
「…あぁ。元気になるまでな」
そう言うやいなや…また夏輝に抱きつかれた。
しかも抱きつく瞬間に見た夏輝の顔は……してやったりと…ニタリ顔。
「やぁっぱり僕の知ってる恭介だ。やっさしい〜♪♪」
…だ、騙しやがったな〜!さすが演技派なアイドル…って感心してる場合か!
「おまえ、騙したな!離れろ」
「ひど〜い恭介ってば!……男に二言はないんでしょ♪」
「うるさい!そんな昔のこと時効だ時効!」
…あれ?なに言ってんだ俺…むかし?…前にも……誰かに…同じことを言った?
「「「昔のこと?」」」
みんなが疑問に思う…とうぜん俺にも疑問である。
「やっぱり身に覚えあるんじゃないの。バカらしい……被告人は被害者との責任をとること。これにて裁判は終了します」
呆れた口調の鈴音。
「くそ〜恭介のやつ……しかし夏輝ちゃんが惚れているんだ。夏輝のため…認めるしかあるまい……うぅ幸せにしてやってくれ」
泣きながらロン毛と他10名は去っていった。
「……恭介くん…………不潔です…」
香織が走り去っていった……いたのか香織…。
「………」
考えている理緒。お前が黙ると不気味でならん。
「思い出してくれた?」
俺に抱きついたまま聞いてくる夏輝。
「いや、なんで昔って言ったのか…自分でもわからない」
抵抗する気も失せた俺は力なく答える…てか誰か縄をほどけ。