投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

年の差
【その他 恋愛小説】

年の差の最初へ 年の差 39 年の差 41 年の差の最後へ

年の差-6-3

「何?」
「がっちゃん先輩は元気にしてる?」
いきなり、そんなことを聞いてくる。
「あぁ、今は、電力会社で営業やってるよ」
がっちゃん先輩とは、俺と同じ学年で、バスケ部だった。
『ガッチャマン』が好きだったことから、あだ名は、がっちゃん。
いつも、周りを楽しませる、ムードメーカーだった。
「がっちゃん先輩が営業かぁ〜口、上手そうだもんね。他には?バンビ先輩は?」
「あぁ、あいつは今、子供いるよ」
「えー!あのバンビ先輩が?女の子、苦手とか言ってたのに?」
「今の奥さんに猛アタック受けて、結婚にまで、こじつけられたらしいよ」
苦笑しながら、言う。
「尻に敷かれてそう!」
悠が笑った。
その笑顔は、学生の時と変わらず、素敵だった。
その笑顔を見て、ほっとする。
やっぱり、悠は、笑顔がいいなぁ…
そう思った。
それから、バスケ部のやつの話、会社の話などを、面白おかしく話した。
その度に、悠の顔は、笑顔になり、声を出して、笑い出すこともあった。



「…あ〜おかしかった!腹筋、痛くなるよ」
「それは、俺じゃなくて、山川って後輩のせいだろ〜」
「山川さん、楽しいね〜…あ、もうこんな時間。菜海さんは、いいの?」
あ、俺は今まで…
菜海のこと、忘れてた。
時計を見ると、病院に着いてから一時間弱過ぎていた。
「あ、まずいな。そろそろ、帰るわ」
「うん。…あ、ちょっと待って。」
ベッドサイドに置いている紙とボールペンで何かを書いている。
「はい。これ、私の新しい連絡先。」
そこには、アドレスと電話番号が書かれていた。
「良かったら…また連絡欲しい」
さっきの笑顔と違う、真剣な眼差し。
「あぁ…」
もらったメモ用紙をジーパンのポケットに入れる。
「じゃ…」
「またね」
悠が手を振って、こっちを見る。
その笑顔は付き合っていた時と変わっていなかった。




帰り道、最寄駅まで歩いて帰る。
左隣には菜海。
世間は、お出かけには持ってこいの日曜日。
暑くもなく、寒くもなく、袖の長いカットソー一枚で十分くらいの暖かさだ。
最寄駅まで10分。
病院を出てから、5分ぐらい経った頃だ。
「いっぱい、話せた?」
菜海が尋ねてくる。
そのニュアンスは、厭味でも、嬉しそうでもなかった。
敢えて例を挙げるなら、挨拶だ。
『おはよう』と聞かれたから、『おはよう』と答える。
そんな感じだ。
「話せたよ。ありがとう」
「そう…」
挨拶のように、返した。

こんな味気無い会話をしたのは、初めてだ。
菜海との会話は、すればするほど、味が出て、深みがでる。
いつでも会った時は、嬉しくて、付き合い始めの頃に比べると、ドキドキすることは少なくなったものの、ドキドキする気持ちはまだある。

気まずい空気が流れる。


年の差の最初へ 年の差 39 年の差 41 年の差の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前