reality ability‐第5話‐西の洞窟、death cave‐-4
「‥‥零歌?貴様、今何て言った?」
皇希は振り返らずに言った。
「‥‥‥天才♪」
零歌は少し違和感がある笑顔になった。目が笑っていないのだ。そして、静かに言った。挑発的な性格なのか、単なる挑発なのかを知りたい。
「っ!俺は天才じゃない!!!勝手に頭に入ってくるんだ!!!ただ、それを身体を使ってやっているだけだ!!!」
皇希は振り返りと同時に、大声で叫ぶ。涙を流しながら、怒り狂った表情で零歌に睨む。瞳の色に変化があった。炎ような深紅になっていた。
「ふ〜ん、‥‥情報を持っていたって、それを使いこなす身体や努力が必要なんだよ?貴方はその二つを持っている。」
零歌は冷静沈着に言う。そして、幻想具現化を消した。と同時に、姿も消す。
「っ!!」
皇希は驚く。動こうとするが零歌の言葉で瞬間的に止まる。顔からは汗が流れる。
「動かないで殺すわよ?‥‥この動きが刹動。貴方以上に努力しているから、ワタシたちの方が上ね。」
そう、零歌は皇希の後ろに居た。彼女は後ろから皇希の首筋に腕を巻き付いていた。密着状態では背後にいる彼女の方が絶対的に有利だろう。
しかし、彼女はどこか優しさを纏っていた。
「‥‥何がしたい?」
皇希は目を閉じる。冷静になろうとする。
「‥‥貴方の身体の回復よぉ。いいかなぁ?」
突然、いつもの口調に戻る。だが、優しさと共に殺気が漂う雰囲気だが‥‥有無も言わさずらしい。
「‥‥解った。勝手にやれ。」
皇希は目を開ける。冷静になったようだ。瞳の色も普段の色の黒色に戻った。零歌の放つ雰囲気に動揺を見せなかった。
「ふふっ、ありがとぅ。‥‥水よ。この者に癒しと温もりを。アクア・リカバリー‥‥」
皇希の身体が少し輝く。その光は数秒後に消えた。特に変わった所はない。
「‥‥そろそろ行きたいんだが?‥‥離してくれないか?」
皇希は呆れた顔になった。皇希は最終手段として実力行使をした。しかし、零歌の腕は思ったようにはいかなかった。
「む〜り。こうして触れるのは最初で最後なんだから。ちょっと触れたいの。貴方なら解るわよねぇ?」
零歌は悲しげな表情で優しさを持つ瞳で見る。皇希は脱出を諦め、ただ前だけを見つめた。
「‥‥手にマメが出来てるわね。陰ながらの努力家は大変ね?」
零歌は皇希の手に出来ていたマメの事を言う。いつの間に作られたマメ。皇希はいつ、努力したのだろうか?