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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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「どうして…」

「しーっ」

言いかけた風炎を遮った。聞きたいことは色々あるだろう。どうして自分を救ったか。どうしてずっと彼の傍についていたか。どうして今、あたしが泣いているのか。

「必要だから。」

私が、誰に必要とされているかじゃなくて。

「あたしが、貴方を必要としているから。風炎。」

誰かのために、自分のために…そんな分類で行動に理由をつけるのはやめよう。

あたしは、あたしがそうしたいから、彼の手を握っている。

そして願わくば、彼のこの優しい笑顔も、同じように生まれたものでありますように。

「大好きなの…風炎…。」

過去に何があったとしても、貴方が求めているのが贖罪以外の何物でもなかったとしても…変えることは出来ない。自分の中の、この感情だけは。そして、もし抱いた気持ちが同じでなくても…あたしは後悔しない。

うなだれて、目を閉じたままで握っていた彼の手が、私の中から消えた。

「すまない…。」

そして、強い力で背中を抱かれて、風炎の胸に顔をうずめた。

「…僕もだ。」

見上げた顔は優しくて、あたしが求める以上に温かくて、そして、あたしが想像もできなかったくらい愛おしかった。

「まぎらわしいのよ…ばか。」

そんな言葉に風炎が笑って、その振動さえ心地よかった。



「茜っ!この馬鹿チンが!!」

病院内ということで幾分か抑えられたさくらの声だったけど、病室の全員に聞こえるくらいには大きかった。何処からとも無くクスクスと笑い声がする。

「ごめん…心配かけたくなくてさ。」

「それが馬鹿チンなの!変に気を使わなくたって、あたしは心配したいんだから!」

ふてくされて、本当に頬を膨らませるさくらの顔に、思わず笑いながら聞く。

「心配したい?何で?」

え?と、逆にさくらが口ごもる。

「だって、心配かけるって、凄い迷惑なことじゃない?他の人のことを心配するって、要は気苦労なわけじゃん。」

うーん…と、唸るさくらは、そうは思っていないようだった。

「でもさ、“心配してくれ!”って頼んだわけじゃないわけじゃない。」

「うん。」

「その人がしたいから心配したのよね…それで私なんかはさ、“心配した”って言われると、“ああ、気にかけててくれたんだ”って思って安心するわけ。だからなんとなく、心配したいんだよね。私は別に頼んでないけどさ、茜だってよくあたしのこと心配するじゃん。」

って、答えになってないか!とさくらは笑ったけど、あたしにはそれで十分だった。


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