Need/-ed-9
「どうして…」
「しーっ」
言いかけた風炎を遮った。聞きたいことは色々あるだろう。どうして自分を救ったか。どうしてずっと彼の傍についていたか。どうして今、あたしが泣いているのか。
「必要だから。」
私が、誰に必要とされているかじゃなくて。
「あたしが、貴方を必要としているから。風炎。」
誰かのために、自分のために…そんな分類で行動に理由をつけるのはやめよう。
あたしは、あたしがそうしたいから、彼の手を握っている。
そして願わくば、彼のこの優しい笑顔も、同じように生まれたものでありますように。
「大好きなの…風炎…。」
過去に何があったとしても、貴方が求めているのが贖罪以外の何物でもなかったとしても…変えることは出来ない。自分の中の、この感情だけは。そして、もし抱いた気持ちが同じでなくても…あたしは後悔しない。
うなだれて、目を閉じたままで握っていた彼の手が、私の中から消えた。
「すまない…。」
そして、強い力で背中を抱かれて、風炎の胸に顔をうずめた。
「…僕もだ。」
見上げた顔は優しくて、あたしが求める以上に温かくて、そして、あたしが想像もできなかったくらい愛おしかった。
「まぎらわしいのよ…ばか。」
そんな言葉に風炎が笑って、その振動さえ心地よかった。
「茜っ!この馬鹿チンが!!」
病院内ということで幾分か抑えられたさくらの声だったけど、病室の全員に聞こえるくらいには大きかった。何処からとも無くクスクスと笑い声がする。
「ごめん…心配かけたくなくてさ。」
「それが馬鹿チンなの!変に気を使わなくたって、あたしは心配したいんだから!」
ふてくされて、本当に頬を膨らませるさくらの顔に、思わず笑いながら聞く。
「心配したい?何で?」
え?と、逆にさくらが口ごもる。
「だって、心配かけるって、凄い迷惑なことじゃない?他の人のことを心配するって、要は気苦労なわけじゃん。」
うーん…と、唸るさくらは、そうは思っていないようだった。
「でもさ、“心配してくれ!”って頼んだわけじゃないわけじゃない。」
「うん。」
「その人がしたいから心配したのよね…それで私なんかはさ、“心配した”って言われると、“ああ、気にかけててくれたんだ”って思って安心するわけ。だからなんとなく、心配したいんだよね。私は別に頼んでないけどさ、茜だってよくあたしのこと心配するじゃん。」
って、答えになってないか!とさくらは笑ったけど、あたしにはそれで十分だった。