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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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『おぉおおぉ…!!!』

「お父さん!!」

彼は、目の前で溶解していった。文字通り。

マグマのような、白熱したどろどろの塊に溶けていく父に、私は最後なんと言う言葉をかけたろう。言葉が叫びになり、叫びさえ意味を成さない嗚咽に変わった頃、巨大なマグマは、徐々に小さくなって何かの形を成そうとしていた。

「あ…」

―人間に戻る…?

もしかしたら、あたしが目の前に戻ってきたことで、ゆっくりと正気を取り戻して人間の姿に戻ってくれるのかもしれない。

歩み去ろうとする何かをこっちに引き寄せようとするように、あたしはただひたすら、父を呼んだ。

「お父さん、お父さん、お父さん!!」

後ろのほうから、ドアを叩くような音がする。風炎がまだ部屋の外にいたのだ。あたしを心配して助けようとしているんだろうか。彼の声はよく聞こえない。あたしは自分の声が父を呼ぶのだけを聞いていた。

その声は、不意に途切れた。渦を巻くマグマのようなものが、強い光を発しながら何かに形を変えた。熱風が、覆うもののない肌にぶつかるように吹きすさぶ。眼球が乾くほどの熱に目をしばたきながら、あたしが見た時、そこには小さな何かがあった。

それは…人間ではなく、生きているものですらなかった。

まだ涙を流すことの出来た目。そこから落ちた一筋の涙が、感情を抱く余裕すらなかった私の乾いてこわばった頬をさっと撫でた。

―剣。

親子であるがゆえか、それとも他の理由があるのか。あたしには父が言いたいことがよおく解った。

私に討てといっている。自らの、仇を。

私に、自らを振るうように誘っているかのように宙に浮くそれに、手を伸ばしかけた。

その時―

「茜!!」

熱で溶けたドアを蹴破って、風炎が戸口にたった。

剣はその刃先を瞬時に風炎に転じ、ものすごい速さで飛翔した。

「風…!」

逃げて、というつもりだった。

実際は、名前を言い終わるのを待たずに、風炎の腹には、剣が深く突き刺さっていた。





世界は動きを止め、自分が悲鳴を上げていることに、しばらく気付かなかった。

「風炎!!」

駆け寄ると、後ろ向きに倒れた風炎の身体からすでに剣は抜けていた。おびただしい血が温かいまま流れ出て、あたしが携帯をポケットから引きずり出す間にも、もちろん留まってはくれなかった。傷口を抑える必要がある。同時に救急車を呼ぶために、あたしは風炎の身体に覆いかぶさった。暖かい血が私の着る服地に、這い上がるようにしみこんでくる。


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