SLOW START Z-3
時計を見ると10時になっていた。
…待ち合わせは11時…うん、今から出ればちょうどいいね。
コートを羽織り、携帯を鞄に入れる。
ブーツを履き玄関の全身鏡で最終確認をした。
…気合い入りすぎたかな…
ドアを開ける外に出る。
鍵を閉め階段を降りて行くと肌寒い風が久々に履いたスカートと脚の隙間をすり抜けた。
…やっぱタイツにしとけばよかったかな…
私は駅に向かい歩き出す。
待ち合わせ場所は映画館のある品川駅の前。
品川駅の前に着きユウキ君にメールを送る。
【今着いたよ〜。タクシー乗り場の近くにいるね。】
腕時計を見るともう10時を少し過ぎていた。
周りを見てもユウキ君らしき人はいない。
電話が着た。
「もしもし?」
『もしもし?!ごめん!電車で寝ちゃって…乗り過ごしたみたい。今恵比寿から戻るよ。すぐ行くからどっかで休んでて!』
ユウキ君は焦りながらも私を気遣ってくれていた。
「わかった。急がなくてもいいからね。じゃあ階段の下のカフェで待ってる〜」
電話を切り、カフェに入ってココアを頼んだ。
ガラス張りの席に座りユウキ君を待つ。
しばらくしてユウキ君が階段を降りてきた。
カフェにいる私を見つけると軽く手を振り駆け寄ってくる。
「ごめん!昨日ちょい緊張して寝れなくて…電車の揺れに負けた〜」
少し息を切らしたユウキ君が隣に座った。
「あはは、初めて会う訳じゃないのに緊張したの?」
「そりゃするよ。前は偶然会ったけど今日は約束して会ってるからね〜」
「そぉ〜?あたしはもう緊張しないよ」
嘘だ。さっきユウキ君の姿が見えただけで心臓が早く動き出した。