jam! 第6話 『穴だらけの街』-7
「……結界って弱くなるモノなんですか?」
「あぁ。結界の管理っていうのは、弱まった結界に力を注ぎ込んで維持する作業を言うんだ。ウチは代々その役目を担って来た」
「じゃあ蒐蓮寺の結界にまた力を入れてやりゃいいだろ?」
二階堂さんが気楽に言ったが、守屋さんの顔はそこで一層難しくなる。
「…ペースがおかしいんだ」
「ペース?」
「あぁ。通常、結界は半年に一回程の頻度で力を注げば十分なんだ。……しかし蒐蓮寺の結界は最近異常に減りが早い」
「どれくらいだ?」
「まず四ヶ月前に一回。ここまでは普通だった。そして一ヶ月前にも消耗している事に気付き力を注いだ」
「三ヶ月で一回か。ふむ、確かに早いな……」
「いや、まだだ」
守屋さんが二階堂さんを遮る。
「実は、それからまた消耗しているのに気付き力を注いだんだ」
「いつだよ?」
「……昨日だ」
「「昨日!?」」
さすがに今度は悠梨ちゃんも驚いた。
ちなみに僕はまだ今一つついて行けてないので、置いてけぼりだったりする。
「そう、昨日だ。だからさっきまた弱まっているのを見て驚いた」
「……明らかに作為的だな」
「あぁ。最初は俺が力を入れ損ねたのかとも考えたが、どう考えても昨日はちゃんと元通りにしたはずなんだ」
「結界をいじってるヤツがいやがるな」
「しかもだんだん削るペースが上がっている。ひょっとしたら、例の首無し幽霊の事件もそれと関連してる可能性があるな」
守屋さんが二階堂さんを見据える。
「……秋次、仕事だ」
二階堂さんは、あの得意のニヤリ笑いで答えた。
「おう。任せろ」
「内容は結界付近の調査、追加で首無し幽霊事件の真相の究明」
「了解!行くぞ、悠梨!リショー君!」
タバコを灰皿で揉み消し、立ち上がる二階堂さん。
慌てて僕も腰を上げる。
「行くって……今からですか!?」
「夜の方が人目に付かなくていいだろ。それに『善は急げ』、だ!」
「俺は店に残って結界の修復の準備にあたる。………死ぬなよ?」
「ハッ。言われなくても!」
言いつつドアを開け、外へ。
僕らも後を追って向かう。
――事件の舞台、夜の墓場へと。