jam! 第6話 『穴だらけの街』-6
「さて、ちょっと話が逸れたが霧生市の昔話についてはこんなところか。……やもりん?」
「……あぁ、終わった…が」
守屋さんは難しい顔のまま呟いた。
「……どうにもおかしい」
「何がだよ?」
「結界のバランスだ」
むぅ、と唸る守屋さん。
と、またもや僕に一つの疑問が浮かんだ。
「結界のバランス、って……。そんなの分かるんですか、守屋さん?」
「そういや言ってなかったっけ?やもりんはな、大昔にこの霧生市の結界を造った五人の中の一人の末裔なんだとよ」
「えっ!?」
守屋さんは顔をしかめた。
「おいコラ秋次。余計な事は言わなくていいだろ」
「いいじゃねーか、減るモノじゃないんだし」
……正直、驚いた。
さっきまでなんとなくお話の中の出来事でしかなかった霧生市の歴史が、急に現実味を帯びてくる。
守屋さんはため息を一つ。
「……はぁ。そもそも秋次に配慮を求めるのが間違いだったか」
「ふっ、そういう事だ」
「褒めてないよ」
説教は諦めたのか、やれやれといった風に説明してくれた。
「……守屋家は、代々この霧生市の結界の管理をしているんだ」
「管理……ですか?」
「代々受け継がれてる術があってね。この地図で陣の全体像と力の流れを把握する事ができる」
いまだ光を放つ地図を指す。
「この他より特に光が強い五つの点が、さっき秋次が話した『穴』の結界だ」
「あぁ、なるほど。これが……って、あれ?」
そして、気付いた。
その光の点の中の一つ。
それが示す場所に、見覚えがある。
「この結界の場所……ウチの学校の裏に……?この場所って確か……」
「そう。そこは君達が持ちこんで来た問題の場所……蒐蓮寺だ」
ようやく、話が繋がった。
「……うーん、でも何か他の結界に比べると光が弱くないですか?」
「あらホント。光の強さは結界の強さを表している……でしたよね?」
悠梨ちゃんが尋ねる。
「あぁ。気になったのはそこなんだ」
「ぁん?結界はだんだん弱まるもんだろ?珍しい事でもねえじゃねえか」
難しい表情の守屋さんに対して、二階堂さんの反応は実にあっさりしたものだ。ついでに僕はというと、また知らされた新事実に疑問符を浮かべていた。