桜が咲く頃〜鈴と矮助〜-4
『鈴を見なかったか?
小柄で、女の子みたいな顔をしたやつなんだが…』
俺は廊下ですれ違った女性に声をかけた。
『あぁ、旦那様と一緒に帰ってきた子でしょう?
お風呂場に入って行くのを見たわ』
俺はすぐに風呂場へ飛んで行った。
『鈴!!』
ガラッと勢いよく風呂場のドアを開ける。
脱衣所は左右に棚があり、ドアを開けた目の前、つまり右側の棚の前に、素裸の鈴がいた。
そして、俺は目が点になった…
俺が硬直していると、鈴は剣を掴んで勢いよく、俺に向かってきた。
俺を、脱衣所の中に引き込むのと同じにドアを閉め、俺の背中を棚に押し付ける。
剣を鞘からから少し抜き、刃を俺の首筋に当てながら
『このことを誰かに喋ってみろ。
お前を殺す』
今まで見たことのない殺意に満ちた表情…
聞いたことのない低く恐ろしい声…
俺は信じられなかった。
だが、鈴のこの態度が俺の考えを肯定している。
小柄で女の子みたいな顔の鈴は…
本物の 女 だった……