桜が咲く頃〜鈴と矮助〜-2
『きれいだなぁ〜』
っと感嘆のため息と共につぶやいた。
『何の用だ』
突然聞こえた声にびっくりし、声の主を探す。
おそらく、さっきの声の主であろうと思われる人物は、相変わらず前を見つめている。
『いや、用はない。ただ君と話をしてみたかったんだ』
そう言うと鈴は怪訝そうに俺を見た。
『そうか、君はいつもこんな素敵な景色をみてたんだ』
賑わう人々が、なんだか眩しい。
鈴はぷいっと、また前を向いてしまった。
二人揃って、街の様子を眺める。
それは、己の力を信じ、常に戦いに目をぎらつかせ、血の匂いをさせている奴らと一緒にいるのとはまったく違う、
なんとも穏やかで、暖かい気持ちになれた一時だった…
それからは、俺も時々木に登り、鈴と一緒に過ごした。
はじめは、俺の話を聞くだけだったが、
次第に、鈴の好きなものは何か?
何が得意かなど、質問に答えてくれるようになった。
そこで、俺が今までに鈴についてわかったことを発表しよう!
鈴は『こんぺいとう』が好き!!
だと思う…
前に、俺が街で買ってきたのを鈴にやったら、なんだか寂しそうに笑い、受け取った。
そして、一粒口に入れて
『甘い…』
と、呟き残りは大事そうに懐にしまった。
ホントは色々聞きたかったんだけど、今は聞いちゃいけない気がして、今もまだ聞けないでいる…
…え?
鈴について、他にわかったこと?
……ない。
だって、鈴はあんまり自分のことを喋らないんだ。
まぁ、この職に就く奴は訳アリの奴が多いから、仕方ないんだ。
ある日のこと、昼飯を食い終わって街をぶらぶらしていると…
『大野のトコ、やばいらしいぞ』
声のした方を見ると、団子屋の店の前のイスに、男が二人座っている。
俺はちょうど空いていた、反対側のイスに座り団子を一皿注文する。