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間−ハザマ−
【悲恋 恋愛小説】

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間−ハザマ−-1

今までに何人かの男とつき合ってはいるけど、誰とつき合ったって大した違いはなく、必死になる男が滑稽に見えた。他人を本気で好きになるなんて、愛するなんて、きっと有り得ない。自分に酔ってるだけなんだと、私はずっとそう思ってた。恋愛に夢中の他人をずっと見下してた…

―ひ〜ま〜…
高校を卒業して半年が過ぎた。私は受験を全て失敗して浪人中…だけど父親と大ゲンカして予備校にも行けず、独学での浪人…
―…もういいや…フリーターでもして、ある程度の年齢になったらお見合いパーティーで玉の輿乗っちゃえば、こんな苦労して大学行くことないし…もうバッカみたい…
私、武田あず(たけだあず)、いつものように図書館で勉強中。それでも浪人生活スタート時はやる気で、毎日、三度の食事以外は机に向かっていた。その生活を狂わしたのは夏だった。大学に行った友達に会い、夏休みで遊びとバイトに明け暮れるその子を見て、イッキにやる気を失った。
―…なんであんなバカ女が大学行って、私が浪人なのよ…やってらんない…
「あれ?武田?」
テキストを閉じた私の前に腰をおろした一人の男…
「…平沢?」
高3の時同じクラスだった平沢直人(ひらさわなおと)。
「何?勉強?」
平沢、私が閉じたテキストを見て言った。
「あ〜…私、浪人中…」
「え?武田も?」
「も?って、平沢も?」
「うん、もうやってらんねーよな、予備校どこ行ってんの?」
「あー…私独学なの」
「え、マジ?何で?」
「父さんとケンカして…父さんが看護学校受けるなら予備校費用出すって言い出してさ、もう売り言葉に買い言葉、独学で行ってやるってたんか切っちゃった」
「最悪…」
「…横山さんは?」
横山加奈(よこやまかな)平沢の彼女。
「…聞いてくれるな…あいつは一足先にパラダイス大学生だよ…」
「はは、最悪〜」
「いいの、俺、頑張っちゃうから」
「でも心配ねー」
「ばーか、俺達の絆はそんなに薄っぺらいものじゃない」
「なによそれ、…どれくらいだっけ?」
「ちょうど2年」
「長っ」
「平沢が短すぎるんじゃない?」
「あんた私の何をどこまで知ってんのよ」
「いーえー、知らないけど」
―…ふーん……
壊してやろう…と思った。ただの暇つぶしで、簡単に出来ると、本気でそう思った…

次の日から予備校が終わった平沢は、図書館へ通うようになっていた。
予備校での役に立つプリントや問題集のコピー等、届けてくれているのだ。
「ごめんねいつも」
「何を言う、同士よ!!共に戦おうぞ!!」
「…あー…うん…」
―平沢ってこんな人だったんだ…
「今日、英語あったんだけど、分かりやすかったから…はい、ノートコピーした」
「ありがと…うわっきったない字〜」
「うっ…、あのですね、武田さん…」
「うそうそ、ありがとうございます。…そうだ、今日、時間も早いし、何かおごる。お礼させて」
―…そろそろ動かなきゃ
「え、マジ?いいの?」
「うん、何がいい?」
「ラーメン」
「は?」
―…まっ、いっか…
私、浮き足立つ平沢の後を追った。
「あっあの角曲がったとこ」
平沢、満面の笑顔で振り返り、言った。
―!!ー……
「…そう」
その時、平沢の携帯がなったのだろう、ポケットから携帯を取り出し、私に背を向ける。
「うん…何?……うん…」
―…横山さん…ね…
「え、今から?…いや、うん…」
―今日はなしっぽいな…残念…、まっ、いっか
平沢、電話を切ると申し訳なさそうに振り向いた。
「…武田〜…」
―………
「横山さんでしょ、早く行きなよー」
「ごめんなー…」
「何言ってんの、ラーメンなんかより横山さんの方が大事でしょ。ラーメンなんていつでも行けるし」
「ん…悪い、じゃあ今後な、あっ、そこのラーメン屋、他の奴と行くなよ絶対!!俺と行くんだから」
平沢、私の方を向いたまま後背に歩きだした。
「わかった、いいから前向いて歩きなよ」
「絶対だぞ、他の奴と行くなよ」
「もう、わかったって!!早く行きなよ!!」
距離が開くほど恥ずかしくなり、私、叫んだ。
「じゃあなーまた明日な」
平沢がようやく背を向けたときには、平沢の姿が随分と小さくなっていた。
―いいやつだな〜平沢って…
この時、私の心に罪悪感がなかったわけじゃない。だけど、止めようとは思えなかった。ただの暇つぶしだし、私は何も傷つかないから…
「もしもし高波(たかなみ)、今何してるの?」
私、ためらいなく男友達の高波に電話をかけた。
「今からさ、ラーメン食べに行かない?…」


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