間−ハザマ−-4
遊園地の前でたたずむ私、今日は平日だから人は少ないけど、ゲートをくぐっていく家族連れやカップル達が妙に幸せそうに見える。
―バカみたい…絶対別れさせてやるっ
その後私は、家に帰る気も起きず、街中をただブラブラと歩き回っていた。
日が沈みかけた頃、平沢からの着信。
「もしもし…」
―……
「今日…ごめんな…」
「…別に…」
「…あのさ…今から会えない?かな…」
「え?何で?横山さんと一緒なんじゃないの?」
なんとなくきつい言い方になってしまう。
「…ちょっと…相談したいことあって…だめ?かな?…」
―ずるい…なにこれ…なによこれ…
「…いいよ…」
それは確かだった…確かに私の鼓動は早くなっている…
図書館の前で会うことになり、私が図書館へ着いたときにはすでに平沢が待っていた。
「横山さんは?」
私、高鳴る胸をグッと抑えて平沢の前に立った。
「…ふられた…」
平沢、うつむいたままぽつりとつぶやく。
―え?…
「…少し会うのをやめようって…」
「…どうして?」
「…武田とここで毎日会ってること知ったらしくて…いや…でも、夏休み入ってしばらくしてから、おかしいなとは思ってたんだ…携帯つながらないときあったし、会う回数も減ったし…」
「…そう…」
私、平沢の隣に立ち平沢の手をそっと握った。
「…武田…」
平沢、私の手をそっと握り返す。
―…そっか…壊れたんだ…
そう、壊れた。
思い通りになったんだから、いいはずなのに…
―これで終わり…
ズキッ―
―え…
「武田、カラオケ行かない?」
平沢、私の手を握ったまま笑顔で言った。
「…そうだね…ねぇ、持ち込みしちゃお」
「おお!!いいじゃん、よし、コンビニ寄ってこ」
私達はコンビニでお菓子とお酒を買い込んだ。
「武田といると…すげー楽しい」
平沢が言った一言で私はなぜだかテンションが上がる。
いい気分だった。ほろ酔いで歌を歌って、平沢の笑顔が…本当にいい気分だった…
カラオケの後も近くの公園でお酒を飲んで、安売りしていた花火をした。
そして…気が付くと、私達はホテルにいた…
あの日から3日…平沢は図書館に姿を見せない。
―…メール…してみようかな…
私、かばんから携帯を取り出した。
画面に映し出された平沢の名前…
―やめた。もう終わったじゃん。あの二人は壊れたんだし、1ヶ月ぐらい暇つぶれたし…そうよ、もうここに来る必要もない…
だけど、なんだろう…どうして楽しくないのだろう…どうして、どうして思い出すのだろう…平沢のキラキラした目とか、無邪気な笑顔とか、手の温もりとか、…熱い…熱い息とか…鼓動とか…
思い出すと苦しくて、息が、息が出来なくなる…体の芯が熱を持つ…
―帰ろう…
私は頭の中にいる平沢を振り払い図書館を後にした。
足が向く方へ歩いていく。気が付くとそこは平沢と花火をした公園だった。
―…何してるの私…
「あれ?武田?」
ドキッ―
心地よい声、そう平沢だ。
「…あ〜…うん…」
言葉が出てこない…
「今から図書館行くとこだったんだよ〜」
平沢、私の隣に並んだ。
「…そう…」
「じゃじゃーん!!」
そう言って平沢は私の目の前に携帯を出した。
―え…
「何?…」
「何、じゃねーよ。変えたのさ、つーか壊れてよー2日かけて親を説得して、今日変えてきたんだよ」
「そう…」
「ちょっ、ちょっとちょっと〜もうちょっと言うことあるだろ?せっかく武田に一番に見せようと思ってきたのによ〜」
―え…やだ…
こんな、こんな些細な言葉でこんなに嬉しいなんて…こんなに鼓動が早くなるなんて…
いや、違う。私は他人を好きにならないから…
「…何それ〜携帯変えたくらいで〜平沢〜かわいいー」
でも、笑顔になるのはなぜ?
「何だよーバカにしてんのかのかよー」
「そう、バカにしてまーす」
心がはずむのはなぜ?…