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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Dawn-8

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「おい!」

地面に着けるたびに爆発するような痛みがする足を引きずって、イナサを追いかけた大和の胸倉を、向こうから風のような勢いでやってきたイナサがいきなり掴んだ。

「いてぇ!なんだよ今度は…あったんだろ?刀…。」

「刀など何処にも無いわ!おまえ、さては澱みの手下か!!ここに誘い込んで、私を…!!」

―おっかねぇ女。

大和はぼんやり思った。でも、凄く綺麗だ、とも。うかつに手を触れれば指を怪我する、美しい剣…そんな感じだ。怒ってる顔でさえこんなに綺麗なんだ、笑えばもっと―

「おい!聞いているのか!」

「え?」

わなわなと手を震えさせているイナサと、ようやくまともに目が合って、大和は正気に戻った。

「刀など無い!と言ったんだ!」

「あ?でも…」

大和が目を向けた先には、確かにあの祠があって、小さな頃忍び込んだあの祠に間違いなくて…開かれた扉の奥には…

「あるじゃねえかよ、ちゃんと。」

やっぱり見間違いじゃない。あの刀を見つけて、勇者になったような気分で振り回していたのを、じいちゃんに見つかってめちゃくちゃ怒られたんだ。これは神器だから、無闇に振り回すと罰が当たる、って…。



ああ、そういえば…



大和はイナサの手から逃れて、一歩ずつ祠に近づいてゆく。月光を受けて煌く白刃が、相変わらず綺麗だった。

大和は、埋もれていた記憶の箱が開いたのを感じた。全てはここから始まったのだ。彼の栄光と転落の半生は。

「ほら。」

手にとって、振ってみる。

「とはいえ、こんな物騒なもんをここに閉まっておくのもどうかと思うけどな。」

遠くから聞こえる鐘の音のような、清んだ高い音がする。刀を振った残像の向こうに立つ女の顔は引きつっていた。

「お前にはそれが神器に見えるのか?」

「え?ああ。大根だって銃弾だって真っ二つに出来そうだろ?おれはこの刀をもう一度振ってみたくて居合いをはじめたんだ…相変わらずキレーだよなぁ。」

へへ、と得意げに笑う大和を、見る女の目が、何故か気の毒そうな表情になった。


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