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青い記憶
【青春 恋愛小説】

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青い記憶-5

「なぁ、陸」

「何?」

「あたし結婚するねん」


あぁ、ほら。
目を逸らしといて正解や。

美幸が慌てて片づけた書類が、かばんから少し顔を覗かせていた。


「よかったやん」

「まだ誰にも言ってないから、秘密やで?」

「はいはい」


西脇からの急かしのメールで俺は立ち上がり、ドアノブに手をかける。

「頑張れ受験生!」と美幸の声が背中越しに聞こえた。

だから俺はポケットの中から取り出した物を美幸に向かって投げた。


「おめでとう、先生」


窓から吹き込む風は、秋の匂いがした。

卒業式に美幸は俺があげたピンクのルージュをつけていた。

でもその後使われたのかは分からん。





「公園通っていい?」


問うと彼女は「別にいいけど…?」と答える。

子供の名前を呼ぶ女の人の隣を通ってみる。

そして小さく囁く。


「その色似合ってへんね」


女の人は大きく振り返る。

俺は顔を合わすことなく彼女の手を引いて立ち去る。





同じような季節。





赤い口紅。





俺の青い記憶―…。





END


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