青い記憶-1
ふと、思い出す。
今と同じ季節。
あの人はまだあの似合わない口紅をつけてる。
「陸、何笑ってるん?」
隣を歩く彼女は不思議そうな顔をする。
「ん?あぁ…ちょっと知り合いが」
――――青い記憶。
【君を愛してる/真田陸メモリーストーリー】
高校最後の夏休みが終わて一ヶ月も経ったというのに、残暑は厳しい。
周りは受験モード。
勉強・入試が教師と親の口癖。
やる気が全く見受けられへんと担任に注意をされ、不機嫌な毎日やった。
放課後の廊下には運動部のかけ声が響いてくる。
体育館からはボールの音が聞こえてくる。
部活を引退した高校生の放課後は暇や。
「陸!」
声をかけてきたのは美幸。
「もう帰るん?」
「おう」
「じゃぁ、ちょっと手伝ってよ」
「はぁ?俺帰りたいんやけど…」
「こっちこっち!」
受験生の俺を何の遠慮もなく引っ張っていく美幸。ほんまにこれでも教師なんやろか…。
美幸なんて呼んでるけど、一応教師。今年の春に就任してきた新米教師。
清楚そうな見た目と違うさばさばした性格で生徒から人気がある。
歳も近いせいで、生徒からは美幸ちゃんと呼ばれてる。