わたしと幽霊‐痛み‐@-3
「どしたの朱美??」
慌てて立ち上がって腕を掴んだあたしを、キョトンと見てる亜子。
うわぁ…絶体絶命!!
「あら?この子…」
あたしを見下ろし、優雅に腰に手を当てるお姉さん。
「見えるのねぇ、私が。…へぇぇぇ?」
高飛車な笑みを浮かべてあたしを見下ろす彼女を、あたしはぎしぎしと見上げる。
「?」
何も知らない亜子が、不思議そうにあたしの視線を追ってる…
「久し振りだな更紗」
注意をあたしから逸らすように、高谷さんが口を挟んだ。
しかし彼女は彼の声をあっさりと聞き流し、物色するような眼差しでじ〜っとあたしを見下ろしている。
な…何でしょう??
そして彼女は、次に横目で高谷さんをちらりと見た。
「…ふ〜ん」
さっきから一人で自己完結してばかりですよお姉さん…?
そして次に、彼女は交互にあたしと高谷さんを見比べ始めた。
「この子面白そうなのに…分かったわよ、ケイ」
首を傾げ、ため息混じりに肩をすくめる。
……?
お姉さんの言ってる意味、全然分かんないよぉ。
「お前、いい加減にその悪趣味やめろ」
「やぁよ」
高谷さんの声に、ぷいっとそっぽを向く彼女。
あ…そういえば二人は知り合いなんだっけ?
呑気にそんな事を思ってたら、高谷さんがちらっとあたしに目配せしてきた。
なんだろ。
目配せの意味に気付かないあたしに、彼がイラついてるのが分かる。
はぁぁ……。
口をへの字にしてるあたしに、高谷さんが大きなため息をついた。
だって分かんないんだもん…
「じゃ、こっちの子でいいわ」
そう、言うや否や。
「おい、待…」
高谷さんには制止するいとますら与えられず。
お姉さんの姿が消失する。
そして亜子の体ががくん、と大きく揺れ――彼女はその場にへたっ、と膝をついた。
えっ…え??
これってまさか…
『悪趣味』って…
目についた人に、手当たり次第憑依する…
「しばらくこの子の体を借りるわ♪」
優雅に髪をかきあげ、高飛車な口調で亜子が立ち上がった。
その情景を目の当たりにしたあたしはもう…唖然とするしかなかった……