Ethno nationalism〜激突〜-7
「藤田さん?久しぶりじゃない!元気してた?あの人も、よく貴方の話をしているわ。それより藤田さん……」
藤田は、焦る気持ちを抑え切れずに幸子の声を遮ると、
「幸子さん。その話はいずれ……ところで、相川は?」
「…仕事よ。さっき、遅くなるって言って出ていったもの」
(…良かった、無事なんだな)
ホッと胸を撫で降ろす藤田。だが、幸子はそんな気持ちも知らず、
「明日でもいらっしゃいよ。貴方の好きだったブリ大根、作って待ってるから。あの人も喜ぶわ」
「幸子さん。今、イギリスなんだ。帰国したら伺うよ」
受話器を戻す藤田。
(…これで、殺されたとしてもオレひとりだ……やってみるか…)
「ヨシッ!まずはメシだ」
藤田はそう叫ぶと、キッチンへと向かった。
レストランで食事を終えた3人は、ホテルへ戻って来た。
「オレは、ここで失礼するよ。まだ仕事が残ってるんでね」
サタニアフはそう告げると駐車場へと歩いていった。マッケイとマリアは礼を言って部屋へと向かう。
スペシャルスイートとは名ばかりのような部屋だ。
ごく普通のベッドルームが二つ。狭いシャワールームに洗面所。ただ、イギリスのホテルらしく、備え付けのガラス棚には紅茶と湯沸かしポットは置いてある。
「一杯やるか?」
マッケイは、バーカウンターからスコッチを取ると、グラスに注ぎ入れる。
ハイランドパークの20年。琥珀色の液体はチョコレートのような甘い香りを漂わせている。
「乾杯しよう」
マッケイがグラスを差し出すと、マリアは黙って受け取り、そばのソファに腰掛けた。
「明後日のミッションに乾杯だ」
グラスが重なる。
マッケイは味を確かめるように、ひと口飲んだ。芳醇な香りと濃厚な味が口いっぱいに広がる。
対して、マリアはグラスを両手で包み込むと、一気に喉に流し入れた。
不可解な表情のマッケイ。
「どうかしたのか?レストランからずっと黙ったままだが…」
そう言って、マリアの表情から何かを探ろうとする。彼女は俯き、空のグラスに視線を落としたまま、
「……支局長」
口を開いたマリア。