投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

平和への道のり
【アクション その他小説】

平和への道のりの最初へ 平和への道のり 68 平和への道のり 70 平和への道のりの最後へ

Ethno nationalism〜激突〜-8

「何だね?」

問いかけに考えがまとまらないのか、マリアはしばらく口をつぐんでから、

「ミッションが終了したら……休暇を下さい」

その顔は、いつもの氷のような表情では無く疲れ切っていた。彼女が初めて見せる表情だ。

そばのアームチェアに、ゆっくりと座るマッケイ。

「……理由は?」

マリアは喋ろうとしない。

「…君は本部付きのエージェントだ。私の一存ではどうする事も出来ん。だが、要望は出来る……」

マッケイの説得に、マリアはようやく重い口を開いた。

「…これまで、エージェントとしての5年間…数々のオペレーションで任務を遂行してきました。
祖国のために命を投げ出して……でも、いくらオペレーションを行っても……我々は、逆に世界から孤立していってます…」

その顔には、苦悩が刻まれていた。

周りを敵国であるアラブに囲まれ、生きるために戦うイスラエル。その度に、国連や先進諸国は彼等に制裁措置を加えてきた。

世界中から非難を浴びようとも、彼らは力強く生きてきた。

だが、マリアには耐えられ無かった。隙あらばと、攻めたててくるアラブやパレスチナは咎めを受けず、自分達だけが非難される事に。

「…分かった。今回のミッションが終了したら。本部に強く頼んでみよう」

マッケイは、そう言うとグラスを傾ける。先ほどとは違い、苦い味が口に広がった。





翌日。午前中に雨は止んだが、空は雲に覆われていた。気温はぐんぐん下がっていく。
冷たい風が辺りを包む。テレビの天気予報では雪のマークが示されていた。

昨夜までと違い、藤田は生き生きとしていた。
朝からスコーンにジャム、キッパーに生野菜をぺろりと平らげる。
それに紅茶も2杯。

彼が、初めてイギリスを訪れたのは8年前。貧乏旅行で泊まったホテルは、レストランはマズい、お湯は出ない、ナイトランプはつかないと、日本では考えられない程ひどいモノだった。
だが、そんなホテルでも紅茶と湯沸かしポットは置いてあり、ビスケットはサービスとなっている。
試しに飲むと非常に旨い。紅茶の葉なのか、水なのかは分からない。多分、両方だろう。
以来、藤田はイギリスで飲む紅茶が好きになった。



気持ちの余裕からか、藤田はウィンザーの街を少し歩いてみようと思った。

レンガ造りや石造りの古い家が並ぶ。どの家も、外壁や屋根がきちんと手入れされ、綺麗にペンキを塗られた垣根が続く。庭の芝生も、きちんと苅込まれている。

いかにも、イギリス人らしい几帳面さが窺える。

歩く道端には街路樹と芝生が植えられ、レンガ色や白い家並みとのコントラストは、美しささえ感じさせる。

テムズ川に架かる橋が見えてきた。この先はウィンザー城へと続く道だ。橋の真ん中に設置されたベンチに腰掛け、テムズ川をぼんやり眺める。


平和への道のりの最初へ 平和への道のり 68 平和への道のり 70 平和への道のりの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前