辛殻破片『甘辛より愛を込めて』-3
よくよく考えたら、僕は何をしているんだろう?
この朗らかな環境に馴れすぎかもしれない。 …また他人に迷惑をかけてしまった。
「すみません…世話をかけさせちゃって」
「佐々見くんがそんなに気にしてどーする。 他人じゃなくて友達なんだから、もっとハジケていこうよ」
「………………はい」
泣きそうで情けなかった。
胸の奥が震えるほど情けない僕だった。
感泣に陥りそうになってる場合じゃない。 僕も行動しないと。
第一に凪だ、まだこの家にいるはず。
「…あの…」
「凪ちゃん…だっけ? そうそう、あの子のことが聞きたかったんだ」
語尾が伸び、くふふと笑う雪さん。
どうやら行動する前に、試練が待ち受けている様だ。
「凪ちゃんと佐々見くんってどーゆー関係なの?」
ほら来た。 猫の口でいやらしい笑みだ。
そういや二人はやっと初対面か。 悪い意味で気が合いそうだし、知り合ってほしくなかったんだけどなあ。
「…別に。 ただの友達です」
「うっそだー。 透が毎晩話に出してくるよ? あの二人はお似合いのバカップルだな、って」
「……そんなんじゃないですから」
雪さんとこういう話をする時は、楽しいけど大抵疲れるパターンである。
とりあえず透をどうしてやろうか…。
「…ちょっとだけ妬いちゃうな」
「え?」
「んーん、なんでも。 …それに、さっき凪ちゃんが起きた時にね…」
「ショウちゃんはどこ!? どこにいるの!?」
「こんな風に泣きじゃくってて…押さえるのは大変だったよ。 もっとも、モテる男が一番大変だろうけど」
固まって、それから驚いた。 心臓の鼓動が一気に早くなる。
凪は、何を支えにして生きてきた?
「…わかってるくせに。 君のことだよ!」
背中を思いっきり叩かれる。 お陰で鼓動の動きが治まってきた。
「…ああ、はい…」
「………今、聖奈は買い物に行ってていないんだ」
「…そうですか」
今の言葉が何を意味するのか、理解できなかった。
「昨日、お風呂は入った?」
「はい、入りました」
「…そう。 じゃあ一端部屋出るから、透の服に着替えてて」
言いつつ、丁寧に畳まれていた衣類を渡された。
「終わったら言ってね」
言い終えて、部屋を出ていった。
何も考えられなかった。