恋の奴隷【番外編】〜愛しの君へ〜-5
「優磨君。これから先、柚ちゃんがあなたを思い出すことがなくても、きっと柚ちゃんの中にあなたはいるわ」
鳴咽を漏らして泣く俺を宥めるように、柚姫の祖母はそう言って微笑んだ。
辛かったね、柚姫。
いっぱい我慢したね。
柚姫の力になれなくてごめんね。
俺のことは思い出さなくてもいいよ。
君が笑っていてくれるのなら。
俺は世界中で何よりも、君の笑顔が好きなんだ。
「柚は大きくなったら何になりたい?」
「優ちゃんのお嫁さん!」
「じゃあ柚は俺だけのだからな!」
「うん、優ちゃんだけのだよ!」
キラキラ眩しくて、まるで春の陽射しを浴びるように柔らかい柚姫の笑顔。たとえ記憶になくても、俺に向けられていたことに変わりはないから─。
「…ま!優磨ってば!こんな所で寝てたら風邪引いちゃうよ」
身体を揺すられて、まだ重い瞼をわずかに開くと、怒ったように眉根を寄せている柚姫が映る。
「あれ…いつの間に俺寝てたんだろ」
「もぉー。優磨ったらしょうがないんだから」
「柚が先に寝てたんだぞ」
「それは…そうだけど…。じゃあ許してあげる!」
「何だよそれー」
ふふふと笑みを零す柚姫に、俺も自然と表情が柔らかくなる。
今、こうして俺の隣には柚姫がいて。あの頃と変わらない優しい笑顔を俺にくれる。
「優磨みたいな男の子の夢見ちゃった」
「俺みたいな?」
「うん、ちびっ子なんだけど、強がりでわがままでほんとそっくり。まるで優磨の子供の頃を見てるみたい。でも可愛いかったなぁ」
思い出したようにくすくすと笑い声を上げる柚姫。本当に君ってやつは、俺をいつだって魅了する。
「俺かもね」
だけど、
初恋は君だということ、黙っておくよ。
もうその笑顔をなくさないように。
これからは俺がずっと守ってあげるから。
わがままで、意地っ張りな俺だけど。
これからもずっと、俺だけの柚姫でいてくれないか。
fin