やっぱすっきゃねん!U…@-8
ー夕方ー
放課後のグランドに若いハツラツとした声が響き渡る。実力テストまでの期間、部活は休みだったので1週間ぶりだ。
ランニングとストレッチを終えた野球部員達がキャッチボールを始める。
佳代は1年生とやり始める。すると、となりで山下とやっている直也が話し掛けてきた。
「お前、昼休みに相田と勉強してたよな?」
投げようとする佳代の手が止まった。
「それが?」
「なんで教わってんだ?」
「それは…アンタに関係…無いでしょ!」
言葉を返しながらボールを投げる佳代。
「…あのよォ、オレも混ぜてくれないか?」
「エエッ!」
直也の言葉に佳代は驚き、顔を向けた。
と、その時、1年生の投げたボールが佳代の頭を直撃する。
「ギャンッ!!」
頭を抱えてしゃがみ込む佳代。投げた1年生は〈すいません!〉と青い顔で近寄ってくる。
「…イッタ〜!」
「大丈夫ですか?」
心配気に覗き込む1年生。
佳代は頭をさすりながら立ち上がると、心配する1年生を安心させぬように作り笑顔で答える。
「だ、大丈夫だから。ボール取ってきて」
「ハイッ」
転がったボールを追いかけていく1年生。それを尻目に、
「アンタが変な事言うからだ!まったくぅ……」
口を尖らせる佳代。直也は悪いと思ったのか、
「スマン…でも、オレも習いたいんだ…」
「だったら自分で頼めば?」
つき離すように言う佳代。だが、直也は困ったような目を向けると、小さな声で言った。
「……言えるかよ…」
その姿を見た佳代は少し可哀想に思えたようで、
「まったく!……良いよ、聞いといたげる」
「ホントか!ありがとよ」
顔をくしゃくしゃにしながら直也は笑うと、持っていたボールを勢い良く山下に返した。
(やれやれ……)
佳代は〈困ったヤツだ〉と言いたげな表情を浮かべながら、キャッチボールを再開する。
翌日から直也も加わった〈有理の数学教室〉が始まった……