やっぱすっきゃねん!U…@-3
「君なら大丈夫だ。私のやり方を見てるし、独自の考えも持っている。必ず成功するさ」
その時、職員室の扉が開いた。
榊と永井の目が集中する。
そこには山下と直也が立っていた。
「どうした?タツヤ。ナオヤ」
「監督にお話があって……」
そう言って一礼すると、中に入って来た。が、その後に続くのは総勢60名の部員達だった。
「…な、なんだ?」
榊と永井は立ち上がった。
3年生を前列に、2年生、1年生と並んでいるのだ。
キャプテンの信也が前に出る。
「…ひと言、お礼を言わせて下さい」
そうして、部員ひとり々の別れの挨拶が始まった。
最初は緊張して聞いていた榊だったが、次第にこみ上げてくる思いに目頭を熱くしていた。
それは、部員も同じだった。平静を装う者、声を詰まらせる者。だが、榊への感謝と別れの辛さを誰もが感じていた。
佳代の番が来た。
元々、涙腺の弱いのか、すでに俯き声を詰まらせている。
そんな姿を見て榊は目を細めると、
「カヨ、頑張れよ。テストは続いてるからな」
漏れる嗚咽を必死にこらえ、頭を垂れると、
「…ありが…ありがとうございました!」
それ以上言えず、職員室から逃げて行く佳代。夕方の保健室からは泣き声が漏れていた。
夕暮れの中、校門を後にする長い影がふたつ。佳代と直也だ。
意気消沈した2人は、無言で歩いていた。
「…監督、急に決まったのかな?」
沈黙が苦手な直也が話題を作る。佳代は相変わらず俯いたまま答える。
「たぶん…違う。ウチのお父さんも何度かあったけど、だいたい2週間前だったもん」
「じゃあ…中頃に?」
「…そうね」
そして、また沈黙。
自転車の〈シャラシャラ〉と、靴の音が一際大きく聞こえる。