Ethno nationalism〜決断〜-1
初冬の朝。
庭に植えた山茶花は白い大輪の花を咲かせ、玄関前のシクラメンも淡い紫の花をつけている。
カーテン越しの淡い光は外が曇りである事を示していた。
藤田は目を覚ました。だが、いつもの風景ではなかった。
(……?)
布団の中に別の温もりを感じる。
となりには静代が、寝息を立てていた。
頭の中で、昨夜の出来事が甦る。
〈…お父さん居ないの……〉
静代の言葉のまま、彼女の部屋に入った。藤田は〈死〉に対する恐怖から逃れるように、すがりついた。
静代を抱きしめ、唇を重ねる。
それは荒々しく。
服を脱ぎ捨て、産まれたままの姿で激しく求める。
人間として快楽を貪るのではく、獣のように本能で……
そっと布団から抜け出す藤田。
凛とした空気に身が締まる。
音を立てないように服を身に付ける。
「帰るの?」
背中越しに静代の声が掛かる。
「ああ…出発の準備をしないと」
静代は身を起こした。裸の胸元が露になる。
「…もう、戻らないの?」
問いかけに藤田は背中を向けたまま、静かに頷くと無言のまま出ていった。
ひとり残された静代。
いつもの自分の部屋なのに、ガランとして寒々しい。
「…う…うう…う……」
何も出来ない静代は、ただ嗚咽を漏らしていた。
静代の自宅から数分、藤田は自宅に着いた。
ポケットからカギを取り出し、鍵穴に差し込む。
(なにっ!)
カギは開いていた。
慌てて玄関ドアーを開いた。おびただしい靴跡が廊下から部屋へと続いている。
藤田は廊下を駆け上がると、リビングを抜け奥の部屋へと入った。
パソコンやビデオカメラ、ビデオ編集機などが、嵐に遭った後のように床に散乱していた。
(どうやら〈目当て〉の物が見つからなかったから引っ掻き回したな……)
藤田は携帯を取り出すと、村瀬に連絡を入れる。
村瀬はすぐに出た。