桜が咲く頃〜鈴〜-1
ここは大笑(おおえ)。
沢山の人が集まる街。
この街のある屋敷の前に、若者が一人立っていた。
その者は、小柄で手足も細く、歳は13、4といったとこ。
しかし、その者の腰には刀があり、小柄ながらどうどうとして見えた。
若者がトントン、と門を叩く。
するとすぐに門が開き、中から人が出てきた。
『はい、どちら様でしょうか?』
『剣豪を探していると聞いて来た。
主はいるか?』
『はい、こちらへどうぞ』
っと、屋敷の中へ通された。
中はとても広く、庭も手入れが行き届き、ほっとできるような暖かさがあった。
庭に面した廊下を歩いていると、
『こちらでお待ち下さい。
すぐに呼んで参ります。』
と言うと、案内をした人はどこかへ行ってしまった。
若者が案内された部屋へ入ろうとしたとき、
『なんだお前は』
横から大きな男がやってきた。
『ずいぶん小さい奴だな。
手足も細いくせに雇われようってか?
お前みたいな奴はさっさと帰れ!
ここは俺様がいれば十分だ』
そう言って、大男は腰にある刀を撫でる。
若者は、無視して部屋に入ろうとする。
『俺様の言ったことが聞こえなかったのか!?』
っと、大男は若者に掴みかかる。
が、若者はひらりとかわし、庭に降り立つ。
『この!』
大男も後を追い庭に降りる。
『調子に乗るなよ!』
っと言うと刀を抜き、大きく振り下ろした。
若者はぴょんと飛んでかわす。
『くそっ!』
大男は若者に向かって、刀を振り下ろすが、飛んでかわされ、かすり傷一つ付けられない。
『ちょこまかと動きやがって!
腰の刀を抜け!!』
と言って、再び切りかかったとき、若者は刀を抜き、大男の懐へ…
『そこまで!』
庭に大きな声が響き渡った。
『お主、一日満金一枚でどうだ?』
かっぷくの良い男性が、廊下から若者に声をかける。
『三枚』
若者は声の主を見向きもせずに答える。
『ん〜…いいだろう。
三枚だな。
契約書を持って来い』
『はい』
若者を案内してきた人物がそう答えると、再びどこかへ行った。