桜が咲く頃〜鈴〜-2
若者は、大男の喉元に突きつけた刀をスッとしまった。大男は止めていた息を吐き出し、肩で呼吸をする。
『お前はクビだ。
どこへなりとも行くが良い』
『そっそんな…!』
『聞こえなかったのか?
ワシがクビと言ったのだ、さっさと消えろ』
大男は若者を睨み付けると、足早に去って行った。
『さて、申し遅れたが、ワシの名は大野常吉。
この家の主だ。
そちの仕事は、この家とワシの命を守ること。
いいな?』
『はい』
『それと、そちの名はなんと申す?』
『俺に名はない。
好きなように呼ぶといい
』
『そうか…ならば…鈴(りん)というのはどうだ?
鈴のように軽やかなそちにはぴったりだと思うが?』
『好きなように』
鈴は膝を着き、敬意わ表す。
『はっはっは…期待しているぞ』
その様子を、少し離れたところから見ている青年がいた。