【DOLL:typeN001】-4
「…美しいな。」
突然男は呟いた。
私は振り向き声の主を確認する。
シャワーを浴びてきたらしく、黒いガウンを羽織っていた。ソファーに腰掛け、こちらに視線を送っていた。
「そうですね……私もこの夜景は好きです。」
そう言って私は顔を戻す。
カランッ…と音がした。ウイスキーでも飲んでいるのだろう。
男は口を開く。
「いや…どちらかというと君のことだ。」
私はじっと外を見つめたまま答える。
「……私を抱く人はみなそう言います。」
私の返事がおかしかったのか、男はまたククッと声をあげた。
「そうだろうな。確かにそうだろう。美しい……ありきたりな言葉だ。私にとっては正直な感想だったのだが。」
私は無言を返す。
それもおかしいのかまた笑う。
後ろでウイスキーを飲み干す音がした。
「それではその美しい君を…もっと見てみたい……脱げ」
男は言い放った。
私は言われた通り脱ぎ始めた。部屋は明るいし、窓が近いのできっと外からも見えるが…大して気にはならなかった。
パサッ…。
一枚一枚ほどいてゆく。
パサッ…。
下着も全て脱ぎ去った。
そこで男は後ろを向くよう指示した。
黙って私は言われた通りにする。
…肌が……乳房が……しなやかなくびれが…下の柔かな茂みが…緩い照明の下、男の目にさらされる。
男はこめかみに手を当てて、微笑を保ったまま静かに私を見つめていた。
その男の姿が淫妖で、少し鼓動が高まる。
……?……
今まで出会った男に感じたことのない感情と、その感情に対応仕切れない自分に私はわずかに戸惑いを感じていた。