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『ぼくをかいませんか』
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『ぼくをかいませんか2 side-K』-4

「おじゃましまーす。」

明るく言う。内心を悟られないように。

部屋へ入ると想像以上に広い。
これは…かなりいい物件の女に当たった。俺は一人ほくそ笑む。
これは今夜と言わず、出来るだけ長く居たい。
それには、この女好みの『男の子』を演じなければ。
この女は…どんなのが好みなんだろ。

「広いねー!僕、こんなの初めてだよ!」

俺は無邪気を装いソファへダイブする。
そして、そっと女を観察する。

俺がこうして女の家を転々としながら生活してこれたのも、この観察力の賜だと思う。
女の隙は見逃さない。
欲しい言葉を与えてやる。
欲しい優しさをくれてやる。
そうしてきた。


でも――


ジャケットを脱いで、キッチンへと入って行った女は一言。

「ごはん作るから、シャワー浴びておいでよ。」

淡々と言う、その表情は凛としていて隙がない…読めない…

さっき一人で歩いていた時の儚げな雰囲気は跡形もない。
“出来る女”になっている。


やりにくいな。
そっと舌うち。


「ありがとう。そうするね。」

“どんな女も胸キュン間違いなし”の満面の笑みを浮かべた俺。
それに動じることなく、女はキッチンから優しく微笑み返した。


くそ、やりにくいな。



シャワーを浴びると、全身に鳥肌が立って、自分がどれだけ冷えきっていたか知らされた。

この女は――
何でこんなでかいマンションに一人で住んでるんだろ?

頭からシャワーを浴びながら、なんとなく考える。

浴室に来るまでにちらちら観察したところ、リビング続きに扉が2つはあった。
ってコトはこの家2LDK?一人で住むのに?
確に仕事は出来そうな女だったけど…なんだか…
いきなり怖い顔のオッサンとか帰って来たりしないだろうな…?



シャワーを止め、脱衣所に出ると、バスタオルと彼女の物であろう上下のスウェットが置いてあった。
いつの間に持って来てくれたんだろ?
しかし…パンツがない。まぁ当たり前か。
俺は裸の体にスウェットだけを身に付けた。
ベッドではすぐ脱いじゃうから必要もないしね。


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