【DOLL:zero-3】-1
……チャポッ……
「……まるで芸術品だね…。」
乳白色の液体に浮かぶ、子どもの裸体を撫でながら私は微笑んだ。
「……なんと美しい…。」
暗い空間が続く部屋で、唯一光をたたえる水槽。横にはコンピュータや心電図など、たくさんの機械が立ち並び、そこからのびた何本ものチューブが水槽の中に浮かぶ少女へと繋がっていた。
少女はまだ幼い体付きだが、大理石のように滑らかな肌、すらりとのびた四肢、しなやかなくびれはまさに芸術とも呼べる程に美しかった。
私は手をのばし幾つかのスイッチを押すと、ビビッという音と共に様々の機械の電源が切れた。
その瞬間、少女は苦しそうな表情を浮かべ息を吹き返す。
…ゴポッ……ゴポ……!
「…ん…ぷはっ…!」
少女はゆっくりと目を開け、その青い瞳に私をとらえる。
私は静かに微笑んで、話しかける。
「……おはよう…ドール……やっとお目覚めかい?」
悲劇の事故から数ヵ月…。
私は一度は失った娘を蘇生させることに成功し、ついに待ちわびた誕生の時を迎えた。
目を覚ましたドールは、まさに妻と瓜二つ。いや…もしくはそれ以上の美しさと言えよう。
流れるような髪。
憂いを帯びた瞳。
艶やかな唇。
汚れなき聖女。
目を合わせた瞬間、戦慄が走った。
……ゾクゾクした。
その戦慄は私に忘れかけていた欲望と興奮をもたらした。
「…子どもだ…」
分かっている。
正真正銘の我が子だ…。
…しかし………。