【DOLL:zero-3】-5
…血まみれの胎児…
…ぐちゃぐちゃに切り刻まれた妻の腹…
…虚ろな妻の瞳…
…妻のケツで腰を振り、喘ぐ男…
それらは今際の光景のように、生臭い血や、腐ったゴミの臭いまでも伝えてきた。
「あー゛!」
私は狂った。
ガクガクと震え出し、頭を掻きむしり、自らを傷付けた。
絶望の果てに、がっくりと膝を付く。
「…そうだ……そうだっ………壊れない体を作らなくては…」
ぼそりと呟き、男はゆっくりと顔を上げ、水槽の中のドールを見つめる。
「一度死んだ体では…いけなかったのか……」
「…あぁ…知能を…!」
男に、再び歪んだ笑みが戻る。
「…知能を植えつけなくては……彼女が私を受け入れるように…彼女が私の名を呼ぶことが出来るように…」
研究室に声が響き渡る。
「…金だ…金がいる…新しいドールを作るには金がなくては…!」
渇いた笑い声と共に、男はふらふら立ち上がる。
「…ああ…ドールよ…待っていておくれ……今度こそ…今度こそは…」
そう言って、研究室を去ってゆく。
……バタン……
扉が閉まり、また静寂が戻る。
残されたドールの虚に開いた瞳と口元は、泣いているようでも微笑んでいるようでもあった。