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聖なる夜に…
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純白の訪問者-1

「敦さん!起きて下さいよ」

佐藤物産ビル25階の応接室。上条敦は例のごとく毛布にくるまってソファで朝を迎えた。
そして、8時半。これまた例のごとく林田めぐみが彼をゆすって起こしている。

「まったく!……」

相変わらず起きない敦に、めぐみはため息を吐いてから耳元に近づくと、

「アツシーーッ!!起きろーーっ!」

途端にソファから飛び起き、辺りを見回す敦。これも、いつもの風景。

「…何時だ?」

「8時半ですよ。さっさと着替えて下さい」

敦は大きなアクビをすると、身体を伸ばして、

「じゃあ5時間は寝たのか……」

そう言って毛布を持って奥へと消えていく。
めぐみはそんな姿を見て、

「まったく!相変わらずなんだから…」

そう悪態をついた。

いつもと変わらぬ光景。変わったのはめぐみの言葉遣い。以前は〈上条さん〉だったのが、〈敦さん〉に変わった事。
それも2人っきりの場合だけだ。
そして、敦に後輩が出来た事。

3ヶ月前の知佳子との件で、思った以上に神経を使っていたのか、体調を崩してしまった。
下痢と微熱が半月以上続き、ついには倒れてしまったのだ。

〈ウイルス性胃腸炎 2週間の加療を要す〉

この診断書に、困ったのは会社だ。敦以外、システム管理に従事している者がいないのだから。

慌てて異動を指示して、彼が2週間の〈リフレッシュ〉を終えて帰ってくると、2人の部下が出来た。そればかりか課長に昇進を言い渡されたのだ。

2つの出来事で、少しは楽になった。しかし、まだ部下が不慣れなため、今でも週に1、2回は深夜業務をこなしていた。

シャワーを浴びて洗面を済ませると、スーツを着替えて戻って来る。

「はい、これ」

めぐみがサンドイッチと缶コーヒーを置いていく。
深夜業務の翌朝、彼女が必ず持ってくる。

これも変わった点だ。

「ありがとよ!めぐみ」

そしてもうひとつ、敦が〈めぐみ〉と呼びすてにする点。以前は〈お前〉だった。


「おはようございます!」

敦に挨拶するのは部下の二宮だ。24歳で、敦と同じ大学の4年後輩だ。学部も同じ情報技術部。

そのためか飲み込みも早く、頼りになる部下だ。


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