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年の差
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年の差-4-1

「山川、悪いこれもコピーしてきて」
コピーをしに行こうとする山川を止める。
「分かりました。一部でいいですか?」
「あぁ」
「では、また後で持って来ます」
と、だけ残して、コピーを取りに行った。


ふぅ…疲れた。
季節は春。
入社式も終わり、あちこちで新人研修が行われているところだ。
俺が疲れているのは、仕事が原因じゃない。
多分…結婚式の準備のせいかと思う。
そして…
菜海の様子が気になる。
あの研究室のメンバーと飲みに行った後ぐらいから、どうも様子がおかしい。





考え過ぎか?
これはわ所謂マリッジブルーってやつか?
止めよ。
気分を変えよう。
そう思い、席を立った。





ガコン。
落ちてきたものを受け取る。
手には炭酸入りのジュース。赤いパッケージで有名なもの。
会社の自販機でこんなのを買うのは俺くらいかも…
自嘲気味に笑って、自販機の前にある二、三人がかけられる椅子に座って休憩する。
程なくして、一人の女性が来た。
「よっ」
声をかけたのは、同期の新井だ。
彼女は、同期の中でも数少ない理系出身の大卒だ。
見た目は、かわいらしいのに性格は男らしく、この間も男性社員を泣かしたと噂を聞いた。
「よっ。珍しいね、こんなとこで会うなんて」
彼女の手には、俺と同じジュースがあった。
「新井さんも、そんな甘いの飲むんだ」
「ストレスが溜まったときはこれが1番だからね」
彼女は隣に座り、ジュースを開ける。
プシュー。
炭酸が入っている証拠の音が鳴る。
ゴクゴクと、飲んでいる。
その姿は、男の俺でさえ『カッコイ』と、思えた。
「何?そんなに見られると気になるんだけど」
「いや、カッコイイなって思っただけだよ」
残り半分のジュースを、一気に飲み干す。
「何か悩んでそうだね」
…え?
「何で分かるの?」
思わず聞いてしまった。
「男の表情を読むのは得意なの」
ふふっと含み笑いをした。
「…読むのが得意な割には、この間、後輩を泣かせたらしいじゃん」
立ち上がり、自販機の横にあるゴミ箱に捨てる。
「え!何で知ってるの?」
びっくりしたような声が聞こえる。
「有名だぜ?トイレに入った男なら皆知ってるよ」
振り返って、新井の方を見る。
焦っているかと思えば、開き直っていた。
「そんなとこにいたの?通りで見つからなかったと思った」
チッと舌打ちをする。
「まぁあんまり泣かせるなよ〜可愛いい後輩を」
仕事に戻ろうと、所属する部署に体を向ける。
後ろの方から、
「もうしないよ。母親がうるさいからね」
呆れたように言う愚痴だけが、聞こえた。


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