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年の差
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年の差-4-4

「前川は理数が好きなのか?」
「はい。物理と化学を取ってるんで」
嬉しそうに答える。
「篤は、中学ん時から理科と数学は成績よかったもんねぇ」
尊敬するようかに、中島が褒める。
同級生を尊敬出来るのはすごいと思う。だけど、
「その分、国語と社会は私の方がよかったけどね」
嫌味も忘れずに言うところが中島らしい。
「悠、一言多いんだよ。あ、先輩は何が得意なんですか?」
「俺?まぁ…どれも、平均ぐらいだし、強いて言うなら、英語が好きかなぁ」
「あ、それは私もです」
中島が笑顔で返してくれる。
「うわ〜英語より物理とか数学だろ?」
苦虫を噛んだような顔をする。
「そんなことないよな?」
同意を求める。
「はい!でも、物理も確かに楽しいかも…」
「悠は、どれも好きなんじゃないの?昔っからそうじゃん。特にこだわりはない…みたいな」
「うん…そうかもね」
と、呟く。
その時の表情には少し疑問を抱いた。
なんで、あんな淋しそうな顔をしたのだろうかと…


中島との関係に進展を見せたのは、年が明けて二月のこと。
俺は、前川に漫画を借りるために、土曜の練習後、お邪魔することになった。
前川の親父さんは、忙しいのか、土曜なのに留守みたいだ。
部活の時に、玄関は開いているから、勝手に入ってくれと言っていたので、入ることにした。
前川家は前々から思っていたが、変わっている。
周りは洋風の家ばかりなのに、前川家だけ、引き戸タイプの和風テイスト。
話しによると、亡くなったお母さんが茶道をやっていたから、らしい。


「お邪魔します」
一応、声をかけてみるが返事がない。
仕方なく、上がろうと靴を脱ぐ。
リビングにいるのだろうか…何回も来ている為、場所は分かっている。
リビングのドアを開けようとした時だ。
「味はどうなのよ?」
中から、女の子の声がする。
「まぁ初めてにしちゃ上手いんじゃないの?」
いつもの皮肉っぷりを発揮しているのは前川だった。
じゃ、中にいるのは中島か?
なら、遠慮することないな。
入ろう。
そう思い、ドアノブに手をかけたとき、
「良かった!これで、安心して真下先輩に渡せる!」
…真下先輩?
…俺?
「でも、どうだろうな?競争率高そうだぜ?」
「…それでも、いい!好きって、伝えたいな」
え?
中島が?
ガチャ。
思わず、ノブに力が入った。
「おじさ…」
中島が呆然としながら立っている。
トレーナーにジーパンと、いつもよりカジュアルな姿の中島。
手には、お菓子らしきものが。
後ろでは、カップケーキを片手に、ニヤリとしながら立っている前川が。
「あ、先輩もう来てたんすか?」
カップケーキを、カウンターキッチンの前にあるダイニングテーブルに置く。
「あ…ごめん、中島が来てるなんて知らなくて」
何、言ってんだ。
普段は、中島がいても堂々と入って行くくせに。
「いや、気にしなくてもいいっすよ」
ニヤリとする前川。
普通の人がすると不気味な表情も前川がすると、決まるから不思議だ。


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