ベルガルド〜美しき恐怖〜-2
「!!?」
辺りが真っ白になった。
川の対岸から複数のライトに照らされ、トゥーラは余りのまぶしさに目を瞑る。
「早くこっちに戻れ!!」
後方からベルガルドの声が聞こえるが、何が起こったかわからず、身動き取れなくなってしまった。
舌打ちするのが聞こえた後、ベルガルドもトゥーラのいる端の中央付近まで走ってくる。
「モタついてるから、挟まれちまったじゃねぇか…」
目が慣れたトゥーラが周囲を見た時には、橋を挟んで両側に、黒い装束に身を包んだ集団に囲まれていた。
「どういうこと?」
「おいおい、この黒いコートどこかで見たぞ…」
そう、あの漆黒の男が着ていた衣服によく似ている。
困惑する二人。そして、黒装束の集団の中から、指揮者と思われる人物が前へ出てきた。
「貴様らに逃げ道はない、投降しろ!!」
まるで軍人のように野太い声でこちらに向かって叫んでいる。
「これは、アーレン国勅使と知っての無礼ですか!?このような扱い許されませんよ!!」
トゥーラは毅然と対応するが、誰一人反応を示す者はいない。
「なぁに…暴力で解決しようってわけじゃない。ちょっと記憶を操作させてもらうだけだからな。」
そう言うと、その男はにやりと笑った。
「記憶の操作だと?ふざけんな、俺を誰だと…」
「ちょっと余計なこと言わないで!!」
トゥーラは慌ててベルガルドの口を塞ぎ、男に向かって呼びかける。
「待って、私達はただ人を捜しているだけです!各国の研究者殺しの重要参考人で…貴方たちに危害を加える気は全くないの!!」
その言葉を聞いた黒装束の集団は、「やはり…」などと呟きながら、うなずいている。
「貴様ら…やはりこのまま帰すわけにはいかないな。」
トゥーラは唖然とした。
(なんか追い討ちかけちゃった感じ…?)
黒い集団が固まりとなって、じりじりと近づいてくる。
ベルガルドはため息をついた。
「お前…ひょっとして疫病神じゃねぇ…?」
「どっちがよ!あんたじゃないの?」
「もうどっちでもいいけどよ…お前が近くにいたんじゃ戦えねぇんだよなぁ…」
そう言うと、さり気なく顎で川の方を指した。
(え…?まさか…)
「川に飛びこんでろ。」
「あんた何言ってんのーーーーーー!!?」
そう言っている間にも刻一刻と追い詰められている。
(何言ってんの?本気で川に飛び込めって!!?)
トゥーラは片足を手すり部分に乗せ、下を覗きこんだ。
そこは水の音は聞こえるが、全くの暗闇…
「こんなの怖くて飛び込めるわけ…っ!!?」
その瞬間
ベルガルドに突き落とされた。
「バカーーーーー!!!」
トゥーラはそういい残すと、水しぶきと共に、姿を消した。
「貴様っ…余計なマネを…何してる!早く下流へ追え!!」
すぐさま黒装束の男は指示を出す。
「行かせると思うか…?」
「なんだと?小僧…」
ベルガルドは赤い目を輝かせ、不敵に笑った。