投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

トラ恋!
【学園物 恋愛小説】

トラ恋!の最初へ トラ恋! 9 トラ恋! 11 トラ恋!の最後へ

トラ恋!秘めた想い--side.孝次---2

『え〜、別に〜? ふふふっ』

 と、妙な笑い方をしたかと思うと、軽快なステップを刻みながら、理香は俺の横を過がっていった。
 その後ろ姿を見つめる俺の心境は、理香の横顔を見つめる今とよく似ていたと思う。

 理由が判明したのは、それから一週間後だった。

 はい、コレ。と手渡された紙袋。中には、薄緑色のマフラー。
 この日は、俺の誕生日だった。
 大事にしてよね、と理香が言い足したそれは、なんと手編みの代物だったのだ。

 だから最近帰りが早かったのか、と聞くと、そんなの関係ないわよ、と返ってきた。
 次の日からまた一緒に帰り始めた時点で、関係ないわけないことは明白だったが。



―…
 ずっと、ずっと……興味が無いんだろうと思っていた。
 異性関係とか、そういうことに……

 でも、どうやら違うらしい。
 理香が興味を持っていないのは「俺」に対して……ということか。



「おい、理香!」

 気付けば俺は、自分でも驚くくらい大きな声を上げていた。
 先に歩き出していた理香が、「なに?」とこっちに振り向く。


「俺……、俺は………」


 言葉が…、思いが、勝手に込み上げてくる。
 これほど自制がきかないなんて、初めてのことだ。


 このまま、言葉にしてしまおうか……ずっと、内に秘めていた思いを

 いっそのこと、伝えてしまおうか……好きだ、と……「ずっと好きだった」と



「…なに?」


 ハッ、と我に返った。

 首を傾げながら、理香は俺の言葉を待っていた。

 自制心の戻った俺には、思いを言葉にする勇気なんて、ほんの少しも残っていなかった。


「……なんでもない。帰ろう」

 自己嫌悪感が、頭に纏わり着く。
 俯きながら歩き出した足が、やけに重く感じた。

 全てを振り払うように、俺は早足で歩いた。


「変なの…」

 すれ違い様、理香がポツリと呟いた。
 俺はもう、何も返すことができなかった。

 ただひたすら砂利の敷き詰められた地面を見つめて、早足で家へと向かった。


トラ恋!の最初へ トラ恋! 9 トラ恋! 11 トラ恋!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前