飃の啼く…第20章-17
ふと、飃の顔を見る。
あの夜、初めてであった彼が浮かべた残酷な表情を、最近は見ることがあまり無くなった。
「どうした?」
私は、なんとなく…何と無く嬉しくて、飃の手を引っ張り、引き寄せた頬にキスをした。
「大好き!それだけ!」
足元では、散って尚美しい花びらが渦を巻いて、時折の風に追いすがってはハラハラと舞い落ちた。飃がどんな顔をしているか、見なくたってわかる。一年のうちに変わったのは、私だけではないのだ。振り向くと、思ったとおり、私の夫がそこにいた。優しい微笑を、私のために浮かべて。