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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第19章-13

―闇毒虚嬲亡飢禍飃災哀憺・・・・



何かが聞こえたような気がして、動かないと思っていた顔を上げる。全くの虚無。その暗闇に、先ほどまで無かった何かがみえた。

それは、この真っ黒な視界の中で余りに明るく、余りに懐かしく、余りに…希望そのものだった。

…北斗七星。



その七つの並びから広がるように、幾つもの星の瞬きが真っ暗な闇を侵食した。星の輝きは震えだし、やがてこの身に降り注ぐ花弁となって私を捉えていた全ての闇を消し去った。

「九重・・・?」



―嗚呼、さくら…



懐かしいその声は、まるで私の頭を撫でる、目に見えない手だった。



―忘れないで。貴方は私、私は貴方。そして私は北斗で、北斗は飃。



私にはその言葉が理解できた。頭ではなく、心でもなく…私を私たらしめるために必要な、自らの身体の中に息づく何かがそのなぞなぞのような言葉を理解させた。そして、これが別れであり、出会いであるということを。



彼女が、確かに微笑んだのを感じて…私も哀しくなかった。別れであるはずのこの瞬間が、祝福すべきものであるとわかっていたから。

不意に、一陣の風が私の正面から吹いて、私の息を奪った。さわやかで、心地いい風。一瞬止めた息を吸いこみ、閉じた目を再び開くと、私は飃の腕の中に居た。



「そして、彼女の中のあなじも消えた。」

飃が言葉をつないだ。皆、真剣に考え込む表情になって、談話スペースの空気まで張り詰めた。

「こんな気がする…。」

神立が、不意に声を上げた。

「きっと、“彼ら”は表裏一体なんだ…多分、そういうことをいいたいんだと思う。」

“彼ら”とは九重と北斗のことだろう。

「表裏一体?」

「伝承では、槍を男、盾を女が持つと明記されていたはずです。さくらさんと飃さんの逆だった。今まで“裏”だったものが、表にかえった、とは考えられませんか。」

飃も私も、ずっと違和感を感じていた。九重も北斗も、今のままで居ることを望んでいないと。何か“別のもの”になることを望んでいると。そう…何かが正しくないと、漠然と感じていたのだ。


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