プロポーズ?-4
「はい、もしもし?」
「あ、オレ…。」
「…どちらのオレ様ですか?」
「…秋田です。」
「ああ、秋田さん。先程はありがとうございました。どうされました?」
「いや、その、なんか声が聞きたくなってな。」
「はぁ、そうですか。」
「ところで、今日の復習をしてみようか。」
「復習?何の?」
「今日話したこと。」
「またぁ、そんな脳トレみたいな事させないで下さいよ。」
「いや、簡単だよ。いくよ。オレの来年の抱負は何でしょうか。」
「…『来年中に結婚する』でしたっけ。」
「正解。じゃ、誰とするのか?」
「分かりません。秋田さん、言ってない。」
「そう、その通り。」
「どんな方ですか。今度紹介して」「しない。必要ない。」
またしても、先行き不透明な会話になりつつある。
何とかしなければ、さっきの二の舞になる。
焦ったオレは彼女が言い終えるのを待たず、力一杯否定する。
「…必要ないってどういうことですか。」
沈黙を破ったのは彼女の少し不機嫌な声。
「だってオレと結婚するの、君だから。」
今度こそ、伝わったはず。
そう思い彼女の言葉を待つ。
しばらくして、彼女の深い溜め息が耳にかかる。
「やり直し。」
「え?」
「秋田さん、いつも肝心なこと言わなさすぎ。」
「そうかな…?」
「そうです!!」
突如、ボリュームの上がった音声に耳がきーんと鳴る。
「付き合い始めだって曖昧なことしか言わなかったし。最初からやり直して。このままじゃ嫌。」
付き合い始めがどうだったかを思い出しながら、彼女も付き合ってる意識があったことに安心し、更に今どうするのが最善なのかを考えてみる。
軽いめまいを感じるのは気のせいか。
「えっと、じゃあ最初から。オレと付き合って下さい。」
「及第点。」
「あの、返事は。」
「はい、喜んで。こちらこそよろしくお願いします。」
よし、第一関門突破。次。
「じゃ、オレと結婚してく」
「はい、待った。」
「ええっ?」
断られたのか、オレ…。
多少は覚悟してたがいざとなると、かなりのショックだ。冷たいマントを被せられたかのように、全身から熱がすっと消える。