WITH YOU...sometime ago-2
――…ッ
優衣香が痛々しい目でこちらをみる。
―泣きつかれて汚いことした。それが後々尾を引いて痛い目に遭った。
カメラ回ってたみたいでさ。そん時はもう友哉と付き合ってたし、和志とのことは全部友哉に相談してたから、説明せんでもわかってくれて、助けてくれた。
――…強いね、友哉クンは
―うん、ほんまに。
でもその事が和志と別れる理由じゃないねん。
もちろん別れようって思ってたけど、やってしまったウチにも責任はあったしな。
別れた原因は、そうやってウチが必死になってたころに、和志が浮気しとったこと。
もぉ人生であれほど最悪や思った日はなかったなぁ。
しかも情けないことに、ウチの実家が府営の八階やって、ベランダ貸したるから死んでくれ。言うて家こさしたんはエェけど、着いていきなり泣きながら土下座やしなぁ。まぁホンマにやるとは思ってへんかったけど。
苦笑しながら優衣香を見やると、まるで捨てられた子犬を遠くで見つめているような顔をしていた。
「そんな顔しなや。そんなんもあって今は友哉と幸せやねんから。でもウチまでヒドくないとは言え、優衣香が同じ思いをするんは見てられへん。やから話てんで」
「うん…。」
時計を見るとかなり進んでいて、そろそろ勤務時間だ。
「ま、頑張れ!!あっちゃん好きなら変えてみせぇ。変えれるかどうかは優衣香次第や」
「ウチにはできひんよ〜沙樹ネェにできひんかったことがウチにできるわけないやん」
立ち上がり扉を開ける。
「大丈夫、優衣香にならできるかもよッ沙樹様の言うこと、信じなさぁい」
そう笑いながら立ち去る沙樹を見て、優衣香はつぶやいてから沙樹を追いかける。
―っとに…かなわんなぁ沙樹ネェには。
「待ってや沙樹ネェ〜!!」
今幸せやから、ウチは和志に感謝できる。
自分をアホやって気づかしてくれたこと。
いろんな世界を見してくれたこと。
また同じ思いをしそうな子に助言ができるようになったこと。
友哉との平凡な毎日が幸せに思えること。
〜♪
携帯が鳴り足を止める。
メールの差出人は懐かしいアイツだ。
にやけながら携帯を閉じると優衣香が追いついてきた。
「何一人で笑ってんの?きしょいでぇ」
ケタケタ笑う優衣香に
「べつに〜」
とだけ返し、お客の待つホールへと急ぐ。
―今日はちょっと良いことありそやな
――結婚しました。
でもやっぱり沙樹は、俺ん中で一番良い女。お前のおかげで人に優しくできるようになった。
ありがとう。
俺も頑張ってみるよ。
無理せず体に気をつけろよ。 和志――