命日が誕生日8-3
私がその廃工場に漸く辿り着いた時…
そこに広がる光景は、
私の想像とはあまりにかけ離れたものだった…
そこには数人の男達…
ある者は倒れ…
ある者は腰をぬかし…
ある者は脅え涙を溜め…
そこにはただ…恐怖
それがまさに全てを支配していた…
そしてそこに唯1人…
静かに……
冷たく……
凍るような視線で……
その支配を飲み込む者がたっていた…
(零?……零…なの?)
そこにいた彼は彼女の知る彼では無かった…
顔も、体も、確に彼そのものな筈なのだが…
いつもの包み込むような優しさも…
少し抜けている愛しさも
力強い大人びた微笑みも
綺麗すぎる横顔も…
彼女は焦り必死に探すが…なに1つ、見付ける事は出来ない……
その時…彼は一言呟いた
死 ね
その瞬間、彼女は堪らず彼の元へ走っていた…
彼女は怖かった…
どうしようも無い程怖かった……
しかしそれは…
零がではない
彼女には零がいなくなる気がしたから…
もぅ2度と零には会え無くなる気がしたから…
零が自分の前から消えてしまう…そぅ思ったから
必死に彼を抱き締める