勇者御一考様-4
ハーツ:肉嫌い?
ミネルダ:あなたが野菜をくれたからお腹いっぱいなの。お肉は好きよ。
ハーツ:じゃあ貰ってもいい?
期待を込めた眼差しでハーツがミネルダを見つめる。
ミネルダはドキリとした。
彼は完璧なまでに整った顔立ちをしている。そんな人に見つめられ、少女の頬は赤く染まった。
ミネルダ:ど、どうぞ。どうせ残しても仕方ないしね。
ハーツ:そんじゃ、いったっだきまーす。
目の前の美男子は嬉しそうに肉を頬張る。
そんな姿に、ミネルダはさっきとは別に心臓の高鳴りを感じていた。
ハーツ:ところでさ。
食事も終わり、ハーツとミネルダはお互いに荷物を背負って宿屋の前にいる。
ハーツ:えっと、ミルでいいや。ミル〜。
ミネルダ:勝手にあだ名付けないでよ。
ハーツ:いいじゃん、呼びやすいし。ミルって何者〜?
ミネルダはため息を付いた。
ミネルダ:今頃?ま、確かにちゃんと自己紹介してなかったわね。ミネルダ・フィッチよ。見ての通り魔術師。
ミネルダは笑った。
ハーツ:あ、笑った。
ミネルダ:え?
ハーツ:笑ったの、初めて見た。
ミネルダ:私だって、笑うわよ。
ハーツはくすり、と笑う。子供の様に無邪気な笑顔だ。
ハーツ:ねぇ、ミルはこれからどこに行くの?
ミネルダ:仕事で、エクルパロナまでよ。
ハーツ:俺も行きたい。
ミネルダ:え?
ミネルダは思いがけない言葉に混乱する。
ミネルダ:だって、あなた勇者でしょ?他にやる事があるんじゃないの?
ミネルダは口とは裏腹に、心では嬉しい気持ちでいっぱいだった。
ハーツ:でも、今の世の中って魔王とかいないし平和じゃん?
確かに、今の世は平和その物だ。国同士の戦争も無く、悪の帝国を築こうとする魔王もいない。勇者は仕事が無いのだ。
ミネルダ:分かったわ。ついて来てもいいけど、仕事の邪魔はしないでね。
ハーツ:だいじょーぶっ!
こうして二人の旅が始まった。