勇者御一考様-2
ハーツ:そんなこと言われたって、俺にだって相手を選ぶ権利が…。
少女:それどういう意味よ!?
ハーツは少女を無視し、さっさと歯を磨きに廊下へ出て言った。
少女:何なの!?もう、あんなの放っとこう…私も寝ようかな。
ハーツが歯磨きから帰って来ると、部屋はロウソクの小さな明りになっていた。
少女はもう寝たらしい。
ハーツ:俺…部屋明るくないと寝れないんだけどなぁ…。
次の日、少女はいつもより少し早い時間に目覚めた。
少女:(え…誰?)
ぼんやりとしながら、窓から入り込む太陽の光が、寝ている自分を覗き込む青年の顔を照らしていた。
穏やかな表情で、さらさらとした黒髪、深い碧の瞳が美しい。
少女:(綺麗な人…)
ハーツ:ねえ、起きた?
少女:え……きゃあぁぁ!?
少女が見とれていたのは、相部屋になった男だった。
少女:私に何したの!?
ハーツ:何も。ただすごいイビキだなぁって思って見てた。
それを聞いた少女は顔を真っ赤にする。
ハーツ:寝顔は可愛かったのにねぇ。
少女:なっ!?
ハーツは少女のベッドから離れて自分の荷物をまとめる。彼はもう旅人の格好だ。
ハーツ:じゃ、俺もう飯喰ってそのまま出るから〜。
ハーツは荷物を持って部屋を出た。一階に降りて食堂に行くと、まだ朝早いため、客は疎らだった。そのため、ハーツは自分の好きな窓際の席に座った。
すぐにコーヒーを出され、勝手に決められている朝ご飯を出される。
少女:あ、いたいた。この席いい?
相部屋だった少女がハーツの向いの席に座ってきた。彼女も荷物をまとめてすぐに出発出来る様だ。ただ服装がやや乱れている所を見ると、かなり急いで降りて来たらしい。
ハーツ:どうしたの?席なら他にもあるのに。
少女:…結構女の子の一人旅って危険なの。変な人に声かけられたく無いじゃない。それに、あなた安全みたいだから。
ハーツ:ふーん。つまり朝食一人で食べたくないんだ。別にいいけど。
少女はギクリとしながらも、ハーツと同じ様に出された食事を食べる。
少女:ミネルダ。
ハーツ:んあ?
パンを口に運ぶ最中に少女が話し掛けたため、変な声が出た。