投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

at office
【OL/お姉さん 官能小説】

at officeの最初へ at office 9 at office 11 at officeの最後へ

at office3-1

展示会当日は、昌樹の動きに目をやる暇がないほど多忙だった。

美南の会社は、お風呂やキッチン、外壁等の建材商品を扱う商社であるため、展示会に足を運んでくれる顧客もその道専門の人達ばかりだ。当然接客には深い知識を求められたし、職人気質(しょくにんかたぎ)の気性の荒いお客さんの相手もしなければならない。だから毎日直に顧客と接している営業部は、最前線で接客を任せられた。他の部所では対応しきれないのである。

美南は営業マンの手が塞がっているとしばらく時間繋ぎの接客をして、手が空くとお茶汲みに受け付け、お見送りと、いわゆる雑用をこなしていた。他の部所から応援に来てくれている人達にも雑用はこなせる。しかし少し込み入った質問をされると、美南が引っ張り出される。そうしてあちこちをウロウロしていた。

「杉下さんは、人の倍働いてるね。」
そう話しかけてきたのは、企画部の永瀬だった。
企画部は、商品の売れ行きの傾向や新商品に対する反応を見る為に顔を出している。
意外な人物に話しかけられて驚いたが、すぐににっこりと返した。
「そんなことないですよ、私、展示会って嫌いじゃないんです。」
永瀬はうん、楽しそうだね。と笑顔を向けてきた。
へぇこの人こんなにさわやかなんだ、意外。と心の中で呟きつつ、笑顔を返しておく。同じ社内にいると言ってもフロアの違う永瀬と話をするのは初めてだ。ゆるくパーマのかかった髪、整った顔、誰にでも愛想がいい、という三拍子がどうしても軽そうという印象を抱かせる。そのせいで永瀬の第一印象はあまり良くない。しかも背の低い美南にとって、180以上あるであろう永瀬は、隣に立つだけで圧巻である。

「営業マンは大変だね。俺達みたいに商品並べるだけとは訳が違うからね、接客は。」
いかに口実を作り、永瀬から離れようと考えていた美南は、意外に真面目な発言に思わず顔を上げた。
「俺、実は入社して半年間は営業部にいたんだよ。企画部の奴が辞めてこっちに回されたけど。その時は岡崎さんに色々教えてもらってたんだ。」

現金とは思うが、昌樹の名前が出ると急に親近感がわいた。永瀬は自分が入社する以前の昌樹を知る人なのだ。しかも教えてもらっていたと言うことは、かなり近くで仕事をしていたのだろう。軽そうと警戒心を抱いていたが、どうも営業部が懐かしくて自分に声をかけてきたようだ。

羨ましい。
そう思ってもどうしようもないが、自分の知り得ない昌樹を知っている事に少し妬ける。
本当はもっと話を聞きたかったが、時間が許さなかった。

相変わらず雑用と接客を代わるがわるこなし、あっという間に日が落ち始めた。5時を回るとさすがに客足も遠退き、会場には数えるほどの人数しかいなくなった。そして最後のお客さんを見送ると、片付けが始まる。

ディスプレイしていた商品を箱に詰める作業をしていた時、綺麗な手が横から伸びてきた。
「あ、永瀬さん。お疲れさまです。」
手伝うよ、と一言告げると、手際よく箱詰めしていく。しばらくあまりの器用さに見入っていたが、はっとして自分も永瀬の隣を片付け始めた。

「営業部にいたころ、岡崎さんと仲良かったんですか?」
皆がバタバタ後片付けをしているのに、大声で無駄口をたたいてはいけない気がしたので、自分も片付けをしつつできる限り自然な声で話せるように永瀬に少し近寄って聞いた。
「うん。よく原さんと3人で飲みに行ったよ。」
「原さんはやっぱりずっと盛り上げ役ですか?」
「まさに。でも酒入ると、俺と原さんが盛り上がっちゃって、岡崎さんがおかん役。」
リアルにその様子が想像できて、思わず吹き出してしまう。
「また飲みに行きたいよ、あの二人と。」
「じゃあその時は私も誘ってくださいね。」
そう言いながら、脚立を一段登り、少し高い位置にディスプレイしてあった商品をとる。永瀬の手助けのお陰でこの周りは直ぐに片付きそうだ。


at officeの最初へ at office 9 at office 11 at officeの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前