命日が誕生日6-3
『でも凄いよね…零。
生前の記憶も曖昧なのに勉強でも学年1番だったらしいし……』
そぅなのだ…
入学にあたり、入試の問題を一応受けたらしいのだが、結果は全て満点だったらしい…
うちの学校は結構レベル高いので有名なのだが
「別に何も凄い事など無い…知識とは経験だ…
人間は、同じ存在で過ごせる期間は精々100年そこそこだ…
しかし俺はその何倍もの時間を過ごしている…
知識とは年月でいやおぅなしに増えるものだ…」
『そっか…でも運動神経は?今は普通の人間と同じ肉体なんでしょ?』
「あぁ…まぁ全く同じとぃぅワケでは無いが…
基本的には力や構造は、ほぼ同じだな…
しかし俺の生前の肉体と同じ能力だからな…
今、この平和で便利な世の中で生きてる人間達とは、どうしても力も能力も戦闘技術も、比べられるものではない…
ようは…その時代にあった体、能力があると言う事だろう……」
『へぇー…やっぱり零が生きてた頃って、そんなに怖い時代だったの?』
「ははははっ……まぁ、怖いって表現が正しいかは解らんが…
少なくとも敵と呼ぶ相手は常に、殺す殺されるの時代ではあったな…
だからなのか、良くも悪くも皆、真剣だった…
今の世のように気軽に何の覚悟もなく…
他人を貶めたりする事は出来無かったな…
そんな真似をしていたら自分も、その家族もすぐに殺されるのがオチだ
その分、常に自分の誇りと他者への優しさの大切さは赤子でもいやおうなしに理解できた…」
『……でも…それって何か……悲しいよね…
他人の…自分の死を目前にしないと……
人は汚く残酷になっていくみたいで…』
「……そんな事は無い」
『………ぇ?』
「お前はこの時代に生きて、それでも他者への優しさをちゃんと忘れていないではないか……
それに1週間前に比べたら段々、良い顔で笑い話せるようになってきた
それは、少しづつでも自分の存在を、受け入れられて来ているなによりもの証拠だろう……」
『………………』
「……確に……
時代や時の流れは、人に大きな影響を与える…
しかし、それは与えられるにすぎない…
その中で、いくらでも自分で、気付き、考え、戒める事は可能だ……
そしてこうして、人を殺さぬとも生きて行ける時代ならば、それもまた少しはやりやすい…」
『……そぅだね…ぅん』
「大丈夫だ…
お前はとても素敵だ…
何百年と人を見つめ続けて来た俺が言うのだ…
間違い無い…」
『……ありがと……』
(ぁぁー……
また泣きそうだよぉ…
……でも……そっか…
零は生前も…
死んでからも…それこそ今までずっと、私なんかが解らない程…沢山の苦悩と葛藤と矛盾に苦しんできたんだろうな…)
今まで対岸の火事でしかなかった遥か昔の…
いや違う……
今も、この世界の何処かでおこっているであろう、悲惨な時間が……
零という、私の大切な人をフィルターにする事で
漸くホンの少しだけ私の中に実感として染み込んできたような気がした