刃に心《第−3話・静夜にて、黒き夜鳥は何想ふ》-5
『もうこんな時間か。そろそろやめようか』
「……わかった…」
刃梛枷は言った。
少々名残惜しいが仕方ない。
『それじゃ───』
「……また…」
しかし、電話が切れる前に刃梛枷は囁くような声で言う。
「………また電話してもいい……?」
『ん?俺はいつでも構わないよ♪』
見えないはずの疾風の笑顔が浮かんだ。
「………ありがとう……」
『じゃあ、おやすみ。また明日な♪』
「……おやすみなさい…」
ぷつり、と回線が切れた。
その音を一瞬だけ聞いて、刃梛枷も通話を終える。
またも静寂が戻ってきた。
しかし、もう寒さは感じない。
刃梛枷は携帯を置いて眼を閉じた。
あぁ、やっぱり自分はあの人が好きなんだ…
最初は少し戸惑うこともある感情だったが、悪くはない。
殺伐とした過去を拭い、自分を受け入れてくれた人。
刃梛枷はスッと眼を開いた。
おもむろに傍らの写真を手に取る。
今しがた瞼の裏に映った疾風が笑っていた。
再び眼を閉ざす。そして…
「………おやすみなさい……」
───ちゅ…
刃梛枷は静かに写真の疾風に口づけた。白い頬が仄かに色づいている。
自分らしくないことをしたと自覚しているのだろう。
すぐに写真を置くと布団を被る。
今夜の布団は少し熱く感じた。
◇◆◇◆◇◆◇
───ブツッ。
「…はい!ということで見ていただいた訳ですけども…」
「黒鵺のこんな一面が見れてしまって、何と言うか…」
恥ずかしさ満点です。
「では、その刃梛枷先輩にお話を聞いて見ましょう。刃梛枷先輩、何かコメントを」
「……プライバシーの侵害…」
「まあまあ、そんなに怒るなよ」
「………」
「でれでれの先輩も大変可愛いかったですよ♪」
「……貴女に言われても嬉しくない…」
「やっぱり刃梛枷先輩も兄貴がいいんですね♪」
「……………」
では、そろそろ時間のようですので、最後に何か一言。
「……このVTRは誰が…?」
「「…」」
え?何でこっちを向くんですか?悪いの私ですか!?
ちょ、ちょっと…刃梛枷さん…そんなぎらついた、刺さったら痛そうな物体を取り出して…
お、落ち着きましょう!ね?人間話し合いが大事……や、やめ…やめてぇえええ!
「では、今回の番外編は終わりです。
また本編で会いましょう〜」
ぎぃやああああああ!
番外編はまだまだ続く…?