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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈貴未篇〉後編-8

「オフカルスの神官であった私は未来の地球に飛ばされた。」

竜の方からマチェリラの声が聞こえる、貴未は辺りを見回しマチェリラの姿を探した。

「傷だらけの私の体を二人の子供が癒してくれたの。」

その言葉をきっかけに貴未の視点は一ヶ所に定まった。それは目の前にいる、白く美しい竜。

「彼らのおかげで私は生きる気力を与えられた。自分の足で立つことができた。」

白い竜は再び光を放ち、その姿を変えた。眩しさで目をそらした貴未が再び目を開けた時にはその姿はなく、あったのは金色の髪、碧い瞳の女性。

「でも人と生きる長さが違う私はまた疲れ果てて、くじけそうになったの。」

目の前にいる女性、その正体が誰かが分かった。さっきまでとは姿が違う、顔が違う、それでも声と雰囲気は変わらなかった。

「マチェリラ。」

湖の上に浮いていた彼女は、ゆっくりと岸へ、貴未へと近づいてくる。

今までの彼女よりかは少し年上に、幼さはなく大人の女性がそこにいた。

「私が生きる気力を失ったとき、貴方達が現れ二回も救われた。」

貴未の前に立った彼女は貴未よりも少し背が高かった。彼女をまとっていた光は消えていた。

「ごめんなさい、人に合わせる為に死んだと嘘をついた。でも、私は生きてるの。」

初めて貴未と永に出会ったときから、マチェリラはずっと生き続けていた。それはほぼ貴未達と同じ時間だった。

でもそれを貴未は知らなかった、流れる時間はどうであれマチェリラは生きている。

「その姿は?」

「本当の私。姿、名前を変えなければいけなかったから。」

貴未は終始切ない表情を浮かべていた。怒るわけでも驚くわけでもなく、困っているようにも感じられた。

「マチェリラ、本当のことを教えてくれ。」

ゆっくりと落ち着いた口調で貴未はマチェリラに願い出た。断る理由はない。

「私の名前はマチェリラ。竜族の末裔。今は太古の国オフカルスの神官だった。」

そう言うとマチェリラはより貴未の近くへと足を進めた。自分の額に手を当て、その手を貴未の額に当てた。

「私の記憶を貴方に。」

マチェリラの指先から貴未の頭の中にいくつもの景色が入ってくる。あまりの勢いに貴未は思わず態勢を崩してしまった。


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