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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第18章-2

「いってらっしゃい。」

そう言った彼女の顔には、笑顔のようなものは浮かんでいなかった。おそらく、彼女は笑おうとしたのだろうが。

「いってくる。」

金属の扉を、静かに閉める。



神立から連絡を受けて彼女の元に駆けつけたとき、そこには15人ものチンピラの体と、彼らが流した血が溜まって沼のようなものが出来ていた。彼女が自分で呼んだ救急車がやってくる前に、飃たちは急いでその場を後にしなければならなかったが、お陰で死人は出なかった。ただ、死にかけているものはいる…意識が回復しない者が数人。回復の見込みがあるのか、彼は聞かなかったからわからない。意識が回復しているものも、警察に真実を証言したところで信じてもらえるわけは無い。

つかまえた女が、真っ黒なバケモノに変身して自分たちを襲ったなど…。どのみち、彼らの親玉は警察に突き出された―暴力団の幹部だというその男には鬼との面会ですっかり弱っているところに、「青嵐」の名を出したところ、これ以上手は出さないと、涙ながらに飃に誓った。



出来ることならば、そのもの達全員にとどめをさしてやりたかった。飃自ら。



けれど、それよりも彼にはやるべきことがあった。

「見つかったか?」

自宅からそう遠くない道の真ん中で、飃とカジマヤは落ち合った。

「いや…本当にどこにも居ないよ…奴ら、絶対また何か仕掛けてくるに決まってる。」

彼らが探していたのは、さくらのクラスメイトで親友の、英澤茜だった。

あの事件で、鬼が口にした言葉…男が鬼に変貌するきっかけとなったあの事件で、攫われたのは彼女かもしれない。気になって飃が彼女の自宅を突き止めた。そして、意外なものと出会ったのだ。

そこには、消えた茜の匂いのほかに、胡散臭いと睨んでいた狐の匂いと…獄の匂い。そして、その匂いの持ち主たちは、行方の手がかり一つ残さずに消えていたのだ。

悪態をつく飃に、カジマヤは聞いた。

「さくらは…?」

飃は、力なく首を振った。カジマヤにはそれで十分通じた。狗族ならば、だれだってあなじの恐怖を理解することが出来る。


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