年の差-3-7
先生の目はあの日と同様、淋しがっていた。
…いや、それ以上かもしれない。
また、私は悲しませるの?
嫌だ。
もう、私は悲しませたくない。
泣く姿を見るのは、もう嫌。
先生、大丈夫。
私がいるよ?
私の左手が、先生の右手にのびる。
距離にして、10センチ。
あと、もう少しで先生を安心させることが出来る。
先生…
距離にして5センチ。
あと、もう少しだ。
先生…
その時。
先生の手が、私の手に触れた。
『菜海』
頭の中で、笑顔の陸の声がする。
あ、何してんだろ?
私にはもう、守るべき人がいるじゃない。
陸の笑った顔。
陸の喜ばせてくれる言葉を紡ぐ口。
陸の優しい手。
陸の頼れる体。
陸の色んなとこに連れて行ってくれる足。
先生を選ぶってことは、それらを全て捨てることになるんだ。
嫌だ。そんなの。
やっと見つけた幸せ。
失いたくない。
「ごめんなさい。やっぱり、私は先生の力になれないです。」
はっきり、言う。
もう迷いはない。
「…やっぱりなぁ」
諦めたように、笑う。
「だって、真下先輩が可愛がってるんだ、そりゃそうだよなぁ」
…え?
『真下先輩』って何?
陸のこと?何で知ってるの?