年の差-3-6
ふぅ…なんか、変な夢見たなぁ…何で今更。
あ、そうだ、先生は…
ソファの方を見てみると、器用に座って寝ていた。
さすがに寒そうだ…
ベッドにあった毛布を、掛けるために、静かにベッドから下りる。
スリッパを履き、細心の注意を払って近付く。
寝てる時まで、腕組んでエラソーな先生の肩から毛布を掛ける。
先生は私なんて存在しないかのように、一人ですやすや寝ていた。
変に意識した私がバカみたいだ。
「あれは一体、なんだったのよ…」
思わず、愚痴る。
あの日、私は間違いなく先生を好きになった。
『このことは、忘れよう』
そんなこと言うから、私は…
「俺は忘れてないぞ」
いきなり声がする。
さっきまで寝ていた先生が、起きたのだ。
「わ!びっくっ…」
最後まで言葉が言えなかった。
こんなの狡い。
こんな時にキスするなんて。
唇が触れるか触れないかくらいのキス。
お腹の下の方が、キュッと痛くなる。
まるで、大きな手で鷲掴みされたようだ。
「何?何で?」
数秒間、拘束された唇が開放される。
「…菜海が好き」
…は?
何?
「何、言ってるんですか?」
「あの後、好きだって分かった。」
カッと頬が熱くなる。
再び、さっきみた夢が思い出される。
「俺、授業は持ってなかった分、菜海の部活での活躍は顧問だから知っていた。皆が言うように、大会の手配、部員の体調管理、マネージャーがいない分、一切を熟していたのを知っている。…高井と一緒にな」
溜まっていたものを吐き出すように、話す。
先生は知っていたんだ…。
「研究室が菜海が入ったって分かった時、本当に嬉しかった。…と、同時に高井に嫉妬までした。菜海の彼氏でもねーのにな」
ふっ、と嘲笑うように、口元が歪む。
「なぁ…俺と付き合わないか?」
温もりを求める目。
淋しいって、体中が訴えている。
こんなのが、1番苦手。
だけど…
手を広げて、受け入れたくなってしまう。
「なぁ…」
先生の右手が私の左頬に触れる。
胸の奥の方を、鷲掴みされた気分だ。
…痛い。
まるで、先生の気持ちみたいだ。
この手に触れたら、私は間違いなく、先生を受け入れる。
もう、あんな表情にさせまいと、必死になる。
私が助けてあげれるなら助けてあげたい。
力になりたい。
こんな私を頼りにしている、この人は。
先生に比べたら、学歴も見た目も劣っているこの私を。